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ドイツの田園都市ヘレラウを訪れる [都市デザイン]

ドイツ鉄道乗り放題チケットが今日で最終日になったので、どこに行こうかと考え、ドレスデンの田園都市ヘレラウに行くことにしました。ヘレラウは以前、ドイツ人の友人に連れて行ってもらったのですが、ただ連れられていったのであまり問題意識もなく歩いていただけでした。そのくせ、大学で「田園都市」の講義をした後、世界中に影響を及ぼした事例としてヘレラウのスライドを使ったりしていましたけど。ヘレラウは世界遺産登録を目指して運動しているのですが、今年も落ちました。ヘレラウには博物館(といっても随分と小さいですが)があり、そこの受付の人に気になることを聞いたら、随分と丁寧にいろいろと教えてくれました。
 ヘレラウは当時の著名な建築家達が集まって家々を設計したのですが、その中でも4名が設計したものはドイツのデンクマール(記念碑)保全の対象になっているので、住んでいる人が改修する際には、ドレスデン市に問い合わせをしなくていけないようです。そして、新築の場合は特になく、ドレスデン市の他の地域と同じように通常のFプラン(土地利用計画)とBプラン(建築計画)には従わなくてはならないようです。実際、街中に出てみると、ヘレラウのデザイン・コンセプトと違うデザインの住宅が多くつくられていました。
 ヘレラウの街並みは、基本、ドイツのユーゲントシュティル運動の中核的メンバーであったリヒャルト・リーメルシュミットの意匠がその基調となっていますが、他の建築家も設計しているので単調にはならない。他の建築家も基本、リーメルシュミットと調和するようなコンセプトのデザインで設計していますが、いい意味で個性が出ているので、調和のある中での多様性のようなものが感じられます。また、通りごとにその担当が分かれていたようで、通りが個性を持つようになっています。
 ヘレラウはカール・シュミットという実業家が工場をつくる際に、ドレスデンの郊外のヘレラウという牧草地の北側を選び、その周辺に工場で働く人達のために住宅をつくることを考えたことで実現しました。ちょうど、イギリスでエベネザー・ハワードが田園都市という考えを発表し、実際、レッチワースという田園都市を1903年から建設し始めました。この田園都市というコンセプトはあっという間に世界中に影響を与え、日本でも関東の田園調布や関西の千里山などに似たようなコンセプトの住宅がつくられたりしますが、ドイツも例外ではなかったのです。シュミットは田園都市のコンセプトに感銘し、それを模倣した。当時のドイツでは社会改革運動が盛り上がっており、その考えも反映させることにしたのです。
 ヘレラウの中心は市場広場です。ただ、ここは駐車場として使われていて、シンボルとしての中心性は弱かったです。非常にもったいない。ただ、道路が直線ではなく地形に沿って緩やかに曲線していることや、庭が広く、また公共の緑も結構、つくられており、非常に住環境は優れているなと感じました。工場はもう操業していませんが、建物は綺麗に保存されており、レストランなどがテナントとして入っていました。私が訪れた時、ちょうど結婚式をあげていました。ある意味、こちらの工場の方が市場広場より、人々が愛着をもつ空間なのかもしれません。
 ヘレラウは田園都市の周辺をも含んだ近隣地区でおおよそ人口が6千人強です。レッチワースの人口が3万4千人ですので、規模では随分と小さいです。レッチワースはしっかりとした鉄道駅もあるし、商店街も相当、しっかりしているのに比べて、ヘレラウは必要最小限の商店・サービスしか提供されていないような印象を受けました。ただ、トラムが走っており、ドレスデンの都心部まで30分で行けます。田園都市のコンセプトの人口規模はハワードは、3万2千人ぐらいとしていたので、レッチワースはほぼそのコンセプト通りです。それに比して、ちょっとヘレラウは小さいですね。とはいえ、住宅の並びの美しさは本家を上回ると思いました。

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【リーメルシュミットが設計した住宅群】

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【工場は現在、テナントとしてレストランなどが入っている】

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【ヘレラウの象徴でもあるフェスティバル・ホール】
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