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甲武信ヶ岳(百名山59座登頂) [日本百名山]

(1日目)
恵那山を下山した後、そのまま自動車で甲武信ヶ岳の麓の梓山まで行き、そこの民宿「白木屋旅館」に泊まる。旅館に着いたのは21時ちょっと前であった。前日は3時間も寝ないで登山をしたということもあり、チェックインをして風呂に入ったらすぐ爆睡した。目覚ましの音で目が覚め、身支度をして朝食として昨晩購入したおにぎりを一つだけ頬張り、チェックアウトしたのが7時。そして、車で毛木平の駐車場まで15分ぐらいかけて行き、準備を整え出発しようとして駐車場の写真を撮影しようとした時点で電池を民宿に忘れたことに気づく。慌てて取りに戻り、再び駐車場に行き、登山届を出して出発するときは既に8時を回っていた。

甲武信ヶ岳は私の知り合いなどは日帰りで登頂したりするが、私はとても無理。ということで甲武信小屋で一泊しての2日コースで山行を計画した。十文字小屋、三宝山経由で甲武信岳に登り、甲武信小屋で泊まり、下りは千曲川源流遊歩道を通るという周回コースである。毛木平駐車場からの道のりは、素晴らしいタケカンバの森で、また登山道もとても歩きやすい。朝日が森の木々を美しく照らし、地表は苔の絨毯のようで、その緑が気持ちを落ち着かせる。懐深い自然の中を一人、もくもくと歩いているのは、心が晴れやかになるだけでなく、頭も明晰になってくるようなリフレッシュ効果もあるということに気づく。森林浴としては最高だ。首都圏から比較的、近くにある山ではあるが、その静謐な雰囲気は早池峰山、大台ヶ原山などでしか感じられない自然の神々しさを感じる。百名山の多くの山は神体山であるが、昨日登った、神体山である恵那山などに比べても、はるかにこの甲武信ヶ岳の方が神々しく、神聖なものを感じる。神は自然に宿り、そこに神がいると指摘されればいる訳ではない、ということを理解するような神々しさである。

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<神々しさを覚えるカラマツの森を歩いて行く>

 十文字小屋までは2時間。森の中を歩き、展望はあまり得られないが、自然との対話をしているような行程は素晴らしい体験だ。十文字小屋の前に「きのこうどん」と書いた看板が立てられており、猛烈に「きのこうどん」を食べたくなり、小屋に入り、注文する。そもそも、当初の計画から、ここで遅い朝食を取ろうと思っていたのだが、「きのこうどん」があるとは知らなかったので嬉しい。小屋は、いかにも山小屋という感じのログハウスであり、雰囲気は抜群である。周辺には石楠花が群集している。小屋には、先客が一人、ご主人とお話をしていた。「きのこうどん」は700円であり、温かいものを胃に入れられるのは有り難い。うどんは当たり前であるがパックもので今ひとつである。これは山小屋だから致し方ない。何かを食べられるだけで感謝しないと。さて、キノコはいろいろな種類があり、味わい深い。しかし、変なキノコがあるな、と口に入れる前に見ると、なんとそれはムカデのような虫であった。ゲゲゲ。これは箸でお椀の外に出し、ご主人には何も言わずに残りのうどんを食べた。まあ、出汁になるかなとも思わなくもなかったが、ムカデのような虫を人類が食べないのはおそらく身体にもよくないからだろう、と思い、残念だが残りの汁は飲まずに残した。

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<十文字小屋や昔ながらの雰囲気が残る山小屋>

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<きのこうどん>

 さて、小屋には30分ほど滞在して、再び登り始める。山の荘厳さは強まるばかりで、本当、この時間にこの場所にいることに感謝するような気持ちにさせられる。11時過ぎには大山の山頂前の鎖場を過ぎ、大山には11時20分に着く。ここからは素晴らしい絶景を楽しむことができる。紅葉で赤く染まった秩父の山々が素晴らしい。大山からは尾根道特有のアップダウンが続く。埼玉県と長野県の県境を行く。武信白岩岳を通過するのは12時30分。ただし、ここは山頂ではない。ここを少しのぼったところの展望が開ける岩場で昼食休憩。いつものようにカップヌードル。それほど寒くはないが、この時期では身体を温めることは重要かとも思う。ここを出発するのが13時。尻岩という奇岩を通過したのは13時30分。この岩は本当にお尻のように見えて愉快だ。さて、それからしばらく行くと埼玉県で最高峰の三宝山への登りになるのだが、なんと、結構、雪が積もっていた。今回、アイゼンは持ってきたのだが、車に置いてきたのだ。これは、恵那山とかもまったく雪が降っておらず、ここも大丈夫かと思ったからだったのだが、大失敗であった。後悔先に立たず、で何しろゆっくりと歩いて行く。三宝山に到着したのは14時30分。山頂からの展望はあまり良くない。ここから甲武信小屋までも1時間ぐらいはかかりそうなので、そそくさと山頂を後にする。一度、鞍部まで下り、最後に甲武信ヶ岳の登りに入る。ここも北側斜面ということもあり、雪が凍っていて注意を要する。登りは楽だが、明日の下りは結構心配だ。そして、甲武信ヶ岳の山頂に到着したのが15時30分。甲武信ヶ岳の名前の由来は甲州、武州、信州、すなわち山梨、埼玉、長野の3県の県境であることから来ている。甲武信ヶ岳より標高の高い山々が周辺にあるにも関わらず、ここが百名山に選ばれるというのがよく分かる、奥深い秩父の山々の最奥にどっしりと構えているその貫禄は、標高の相対的な低さなどを問わない存在感を有している。金峰山、瑞牆山(瑞牆山は見間違いない形状をしている)などの山々の見事な展望が得られたが、残念ながら富士山は見られず。結構、距離的には近いはずなのだが。ここから、甲武信小屋までは下りで20分。どうにか、16時前までにはチェックインできた。

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<大山からも見事な展望>

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<大山から川上村を展望する>

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<大山から三宝山を望む>

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<いつものように昼食はカップヌードル>

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<尻岩は名前通り、お尻を思わせる形をしている>

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<三宝山への登りはところどころアイスバーンになっており、アイゼンを持ってこなかったことを後悔する>

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<甲武信ヶ岳山頂からの見事な展望。疲れが吹き飛ぶ>

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<甲武信ヶ岳の山頂>

 甲武信小屋はログハウス風でいかにも山小屋という風情を醸し出していた。昭和感がするような山小屋であり、雑魚寝である。夕ご飯はカレーで17時30分から。当たり前であるが美味しくはないが、こういう山で温かいご飯にありつけるのは本当、有り難い。18時には床に着いて就寝。

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<甲武信小屋>

(2日目)
 早く寝たのはいいのだが、目が覚めたらなんとまで22時30分であった。あちゃー。しかも頭が冴えてしまっている。これは、何たることだ、と思ったがそのまま布団の中でうとうとしていたら朝の5時になっていた。どれくらい脳味噌が休まったかは分からないが、5時30分から朝食の時間なのですぐ起床して準備をする。朝ご飯もお味噌汁とご飯とお漬物と海苔と茶碗蒸し。こういう時に海苔は有り難い。私の周りに座った人たちは、それぞれふりかけや煮卵などを取りだしていた。確かに、おかずは少ないので持参するのは賢明だ。今度、似たようなシチュエーションの時は持参しよう。
 宿を出たのは6時。小屋周辺はアイスバーンのような状況になっており、横歩きで歩いて行く。どうも夜に雪が降ったようで、木々の枝は白くなっている。山頂まで再び登る。山頂に着いたのは6時25分。昨日と違ってガスが出ているので視界はほとんど得られない。そそくさと山頂を後にして下山を開始する。大弛峠との分岐点に着いたのは6時50分。ここからはジグザグの急坂を下りていくのだが、アイスバーンのような状況でアイゼンがないと相当、危険である。宿で隣に寝た人が、アイスバーンで捻挫をしていたこともあり、ここは慎重に慎重を期して、蟹の横ばいのように降りていく。ストックがなければ降りるのは無理であったろう。千曲川水源地の標識がある場所に着いたのは7時10分。ここからは千曲川の渓流沿いを歩いて行くのだが、その渓流美は特筆すべきものがある。英語のSereneという言葉が浮かぶ。十文字峠ルートとはまったく違う魅力であり、この周回ルートは、この甲武信ヶ岳の多彩な魅力を体験させてくれる素晴らしい登山ルートであると思う。滑滝という細長い滝に到着したのが8時30分。ここからは積雪もなく、歩きやすい道となる。途中、行き交った登山者が「こんなに平らだと退屈しちゃうよ」と不平を言ったのが驚きであった。個人的には、この見事な森林の中を歩いているだけで感動的に素晴らしい体験であると思っているのだが、そのように感じない人もいるのだな、という驚きである。まあ、登山者も十人十色ということだろうか。
 十文字峠ルートと合流したのが10時05分。ここまでくれば毛木平まであと僅か。駐車場には10時10分に到着した。下りはほとんど休みも取らずにひたすら歩いたが、積雪のところをゆっくりと歩いたこともあって、時間的には結構、かかってしまった。とはいえ、10時過ぎに下山というのは、帰路の時間を考えるとなかなか理想的である。
 甲武信ヶ岳に登ったことで秩父山塊の6つの百名山(両神山、雲取山、甲武信ヶ岳、金峰山、瑞牆山、大菩薩岳)を踏破したことになるが、甲武信ヶ岳はこの中では圧倒的に素晴らしかった。秩父という野球チームがあるとしたら、唯一オールスター・クラスの打率3割、ホームラン30本のバッターという四番打者のイメージである。まあ、そういうことを書くと金峯山(金峯山も打率2割8分ぐらいの凄さはあるかと思う)には怒られるかもしれないが、甲武信ヶ岳の凄みは山頂というよりかは、その山塊の生態系の素晴らしさである。特に森が素晴らしい。秩父という自然の素晴らしさを最も体現している山なのではないかと考える。とはいえ、百名山しか登っていないので、他の秩父の山の素晴らしさを知らない若輩者の無責任な意見として捉えていただければと思う。

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<昨日とは違って、木々は雪化粧をしていた。おそらく夜に雪が降ったのであろう>

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<千曲川源流の標識>

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<千曲川源流ルートは、渓谷沿いの道で、十文字峠とは違った魅力を放つ>

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<滑滝>

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<十文字峠ルートとの合流点。あと5分ほど歩けば毛木平駐車場>

登山道整備度 ★★★★☆ 素晴らしく歩きやすい。ただ、どこもが登山道のようなところがたまにあり、道に迷う。ピンクのテープを目印として歩いて行かなくてはいけないところがある。
岩場度 ★★☆☆☆ 大平山、三宝山に登るところにちょっとした鎖の岩場はあるが、それほど大したものではない。
登山道ぬかるみ度 ☆☆☆☆☆ まったくないと言ってよい。千曲川源流ルートは季節によっては、多少ぬかるみができるかもしれない
登山道笹度 ☆☆☆☆☆ まったくない
虫うっとうしい度 ☆☆☆☆☆ (虫はいなかったが、これは季節的なことかもしれない)
展望度 ★★★★☆ 十文字峠は尾根道なので展望は素晴らしい。また山頂からの展望が優れているのは甲武信ヶ岳、そして大山。一方で、千曲川源流ルートは展望は期待できない。
駐車場アクセス度 ★★★★★ (駐車場への道はしっかりと整備されている)
トイレ充実度 ★★★☆☆ (登山道の入り口にはしっかりとトイレがある。十文字小屋、甲武信小屋といったところでトイレに行くことができる)
下山後の温泉充実度 ☆☆☆☆☆ (川上村は基本、温泉はないようだ)
安全度 ★★★★☆ 登山道はほぼ安全ではあるが、ルートに迷う可能性がないわけではないので、その点は留意するといいであろう

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