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長崎市の都市計画について考察する [都市デザイン]

長崎市のまちづくり部長の講演を聞く。「長崎市の現状と未来」というような話であった。長崎市は個人的には都市計画が大変、上手いと思っていたので、そのトップがどのように長崎の都市計画を考えているかは興味津々であった。さて、しかし、都市計画のトップが話したプロジェクトはほとんどすべてが箱物というか大規模プロジェクトであった。
私は「都市の鍼治療」というクリチバ市のジャイメ・レルネル氏の考えを具体化させたようなプロジェクトの事例を紹介するウェブサイト(http://www.hilife.or.jp/cities/)に連載記事を掲載しているが、長崎市は結構、そのネタとなるようなものが多く、実際、紹介しているものも数点ある。ただ、私が興味深いというプロジェクトでまちづくり部長が紹介したものは「水辺の森公園」だけであった。しかも、これは長崎市としてはホテルなどを整備する計画を策定していたのだが、バブルが崩壊してしかたなく公園にしたと説明された。加えて、それが一番市民から評価されているのは「皮肉です」とまで言っていた。いや、これは皮肉ではなくて、この大規模箱物プロジェクトという路線を大きく変更すべきだと反省するようなことであろう。この経験を踏まえて、路線を変更しました、というなら話は分かるが、単なる予測のズレと捉えているのであれば、将来的にも同じ過ちを繰り返す。ということで、実際、新しいプロジェクトとして紹介されたのも巨大な都市開発プロジェクトであった。2022年にこういう話をする、ということ自体、ちょっと驚いたが、それが、私が都市計画の優等生である長崎市の都市計画のトップがしたというのは、本当に驚きである。
これら紹介されたプロジェクトは「水辺の森公園」を除くとすべて、その長崎市のアイデンティティが希薄である。それらは経済ベースでの発想に基づいており、市民の生活を豊かにするという考えが弱い。また、市民の空間への需要を「機能」という限定された物差しで評価しており、本来的には「機能」だけでは評価しにくい「デザイン的な質」、「場所の性質(アイデンティティ)」みたいなことを反映させることが重要だ。そのようなことをすることで、場の価値は初めて特別なものになるのだが、そのような意識を持っているとは講演からはまったく伺えなかった。
「水辺の森公園」は、上山良子という土地の声などを聞くのに極めて長けたランドスケープ・アーキテクトが設計した。彼女はさすがローレンス・ハルプリンに師事したことだけあって、長崎港の場所の声を見事、空間に表現することに成功している。
といいつつ、長崎市は都市デザインには力が入っていて、それらは素晴らしい成果をもたらしている。稲佐山、出島などのプロジェクトは日本でも最先端の優れた事例であると思われる。これは市長がしっかりとその大切さを理解しており、景観専門監を設置しているからであろう。
とはいえ、これだけ素晴らしい都市計画を展開しているのであるから、まちづくり部長は相当、イケてるのだろうな、と期待していたら、その期待は大きく裏切られた。一方、まちづくり部長が今ひとつでもいい都市計画が進められる、というのは面白い発見であった。市長の都市計画に果たす役割の大きさを改めて知る。
 

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