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井上章一『大阪的 「おもろいおばはん」はこうしてつくられた』 [書評]

井上章一が産経新聞で連載していた「井上章一の大阪まみれ」を元原稿とした、大阪に貼られた様々なレッテルを検証した文章と、過小評価されている大阪の個性を取り上げた文章、そしてあまり知られていない大阪の歴史とからなるエッセイ集。前者は「大阪人はおもしろいのか?」「阪神ファンは昔からいたのか?」「大阪のエロい街という評判はどうつくられたのか?」、過小評価された大阪の個性は「大阪には美人が多い」(なんせ著者は美人研究家であるからして)、「音楽の都」、「グルメ都市」、そして知られていない大阪としては「アメリカとの関係」、「一般的な日本史理解から隠蔽されている大阪」が取り上げられている。基本、大阪の偏見などは東京(江戸)によってつくられており、不当に過小評価されていて、見下されている。それに対する大阪の怨嗟のようなものが、大阪人ではない著者が人ごとのように距離を置いて語っているのが、この本の特徴であろう。
 個人的には「阪神ファン」は在阪のラジオが試合を中継するようになってから増えたことや、グルメ都市大阪の本領みたいなところは興味深かった。
 また、全般的に人口は減りつつあるとはいえ、1億2千万人もの巨大な人口を擁し、経済的にも文化的にも成熟している国が、中央集権的な運営をしていることが、大阪という大都市圏でみればニューヨークやパリやロンドンよりも巨大な世界都市を二流に機能させていることの地域的だけではなく、国家的損失が表層的なサブカルチャーでも現れていることが分かり、興味深く読むことができた。ちなみに私は東京ものである。


大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた (幻冬舎新書)

大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた (幻冬舎新書)

  • 作者: 井上章一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/11/29
  • メディア: Kindle版



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共通テーマ:日記・雑感

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