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ケビン・リンチのグッド・シティ・フォーム [都市デザイン]

ケビン・リンチのグッド・シティ・フォーム。フォームというと形態論であると思いがちであるが、リンチのいうフォームは姿勢的な意味合いをもった都市の「あり方論」である。リンチの文章は面白く、難読である。これは、リンチが最初に自説の反論を一つずつ潰していき、そして最後に自分の主張をするというスタイルを取っているからだ。そのため、しっかりとした読解をしないと、リンチが主張するのと真逆の理解をしてしまう危険性がある。また、ちょっと饒舌でもある。若干、脱線とまでは言わないが寄り道をする癖があるので、そのまま直訳をしていると迷走してしまう。そういう意味では、一人で読むというよりかは輪読なので一歩一歩、理解してから前進するといった読み方をするのが望ましいであろう。
 リンチは驚異的な知識の持ち主であり、都市デザインの百科事典のように博学である。そのため、その書は多面的な視点を読者に提供してくれる。しかし、その多面性ゆえに、何か解を求めている読者にとっては分かりにくい。読者が自分で考えることを要求するので、受動的な読書姿勢では、莫大な情報が入ってくるだけで、それを咀嚼もできなければ、リンチが何を言おうとしているかも見えなくなる。また、リンチの主張が強い訳でもない。リンチは原理論者からはほど遠く、歴史の相対性、都市規模の相対性、都市成長・衰退の相対性と、「相対的」に捉えることの必要を説いており、画一的な価値観を共有することの危険性を訴える。
 絶対的な正解はない、ということを数多くの論説を紹介することで我々に理解させようとする。そして、その姿勢は読者を謙虚にさせる。都市デザインを学ぶ学生、実践するプラクティショナーはまさに必読の本である。ジェイン・ジェイコブスよりこの碩学の研究者、実践者の本を読むことを優先すべきであると強く考える。


Good City Form (The MIT Press)

Good City Form (The MIT Press)

  • 作者: Lynch, Kevin
  • 出版社/メーカー: The MIT Press
  • 発売日: 1984/02/23
  • メディア: ペーパーバック



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