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『地方創生の正体』 [書評]

久し振りに「読むべき図書」に出会ったというのが、読後の印象である。なぜ地域政策は失敗するのか。それは、そもそも中央政府は国策として、地域を消滅させようとしているからだ、という主張は、豊富の事例と二人の著者の論理的な思考によって、大変説得力のあるものとなっている。そういう意味で、地方がどんどんと衰退しているのは、国策としては失敗どころか成功であるのだ。ただ、本書が指摘するように、それらの地域の消滅は一方で統治の失敗であるという矛盾。増田レポートの偽善も明確に暴き出してくれる。地域の問題、統治の問題をしっかりと論証する本書の内容を理解することで、なぜ日本政府がコロナウィルスを抑制できないのか、オリンピックを中止することができずなし崩しに突進してしまうのか、といったことも分析できる。それは、自分達の都合が悪いもの(自治体等を含む)を排除していったことによって、自浄機能を失い、自分達が何をやっているのかも認識できなくなった安倍政権から続く、自民党体制とそれを維持させてきた中央政府の末期的症状が必然的にもたらした事態である。日本は、我々が思っているよりずっと深い沼に沈み込んでしまっている。


地方創生の正体 ――なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)

地方創生の正体 ――なぜ地域政策は失敗するのか (ちくま新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/11/01
  • メディア: Kindle版



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