『今井町 甦る自治都市』 [書評]
奈良県橿原市にある今井町。全建物数約1500棟のうち、約500棟が伝統的建造物であり、これは全国で最も多い地区である。この今井町の住民が、どのように町並み保全に至るか、その経緯を関係者への取材等を通じて明らかにした力作。素晴らしいルポルタージュである。
本の最後の方で、東大名誉教授である渡辺定夫氏が、「今井町は当然、世界遺産」と述べたのが印象に残っている。そもそも国が重要伝統的建造物群保存地区制度を策定したのも、今井町の保全が前提となっていたそうだ。しかし、自治都市としての長い伝統を持つ今井町の住民は上からの押しつけ的な制度に抵抗し、それが1993年に選定されるまで、制度ができてから18年も経っている。当然、第一号として指定されるべき条件を満たしていたにもかかわらず、いろいろと紆余曲折があった。それは、人々が生活する空間をいかに保全するかの難しさを物語っていると同時に、住民の意向というのが、まちづくり、都市計画において極めて重要であることをも示唆している。
このような本がしっかりと世の中に出たことは、今井町の記録としての価値だけでなく、まちづくりや都市計画の難しさを理解するうえでも極めて価値があることだと考えられる。そして、この住民とそれを取り巻く人々との葛藤の積み重ねがあるからこそ、今井町の現在の姿の有り難みがさらに実感できる。そして、その遠回りとも思えるようなプロセスを経たからこそ、今井町は博物館ではなく、今でも歴史都市として現役の姿を維持しているのだ。
本の最後の方で、東大名誉教授である渡辺定夫氏が、「今井町は当然、世界遺産」と述べたのが印象に残っている。そもそも国が重要伝統的建造物群保存地区制度を策定したのも、今井町の保全が前提となっていたそうだ。しかし、自治都市としての長い伝統を持つ今井町の住民は上からの押しつけ的な制度に抵抗し、それが1993年に選定されるまで、制度ができてから18年も経っている。当然、第一号として指定されるべき条件を満たしていたにもかかわらず、いろいろと紆余曲折があった。それは、人々が生活する空間をいかに保全するかの難しさを物語っていると同時に、住民の意向というのが、まちづくり、都市計画において極めて重要であることをも示唆している。
このような本がしっかりと世の中に出たことは、今井町の記録としての価値だけでなく、まちづくりや都市計画の難しさを理解するうえでも極めて価値があることだと考えられる。そして、この住民とそれを取り巻く人々との葛藤の積み重ねがあるからこそ、今井町の現在の姿の有り難みがさらに実感できる。そして、その遠回りとも思えるようなプロセスを経たからこそ、今井町は博物館ではなく、今でも歴史都市として現役の姿を維持しているのだ。