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竹内正浩『地図と愉しむ東京歴史散歩』 [書評]

東京は破壊と再生を繰り返した「不死鳥」のような都市である。本書は、明治以降(江戸時代にも多少、踏み込んでいる章もある)の東京がどのように変遷してきたのか。古地図との比較から丹念に、それを描写している。たいへん面白く、好奇心を刺激される。9つの章からなり、次の9つの切り口から東京の変遷を浮きぼらせている。それは水準点、明治の五公園、市営霊園、水道道路、川、山手急行電鉄計画、軍都、帝都復興道路、廃線分譲地である。個人的に特に興味を引いたのが、荒川放水路という大土木事業を解説した「川」の章と、山手急行電鉄計画の章である。前者は実現されたことで東京東部が大きく変貌したものであるが、後者は未完であるが、もし実現されたら、どれほど東京の姿が変わったであろうか。想像するだけで楽しくなる。また、これらの歴史の記憶が土地に残っている場合もあるが、痕跡がまったくなくなった場所も少なくない。忘れたくなるような記憶(たとえば赤線地帯であったことなど)であるのかもしれないが、ネガティブであっても、それは東京(江戸)という都市の事実であり、物語でもある。そのような土地の記憶をしっかりと継承させることの重要性もこの本は読者に伝えているような感想を抱いた。


カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩 (中公新書)

カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩 (中公新書)

  • 作者: 竹内正浩
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/07/11
  • メディア: Kindle版



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