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若者は本当はそんなにラーメンが好きではない [B級グルメ雑感]

私のゼミ生は好き嫌いが多い。ソーセージが食べられない、ネギが食べられない、トマトが食べられない等、もう食べられないもの尽くしだ。しかし、そのゼミ生が異口同音に「ラーメンは好きだ」と言う。それじゃあ、ラーメンを調べるか、と言ってラーメンをゼミで調べることにした。とりあえず、そこで設けたゼミの課題は「伏見・深草周辺のラーメン屋のラーメンを食べること」である。この課題を通じて、ラーメンについてゼミとしていろいろと知識や知見が集積されるだろうと期待した。
 さて、しかし、ゼミ生はこれらの課題をしない。少なくとも、これまでラーメンを食べていたペースよりラーメンを食べたような形跡は一部の女子学生を除くと見られない。普通、ゼミの課題がラーメンを食べて、その特徴をラインにアップするというものだったら喜ぶのではないかと思う。しかし、そうではなかったのである。
 それで分かったことは、ゼミ生はとりあえずラーメンが好き、というと格好いいので言っているだけだということだ。これは、なんか私のような50代のオヤジが現在、クィーンが好きだというと、時代的に正しいというのと似ている。本当はそんなに好きでもないのに、好きというと「通」というか「分かっている」ように思えるので、とりあえず言っている。これは、団塊の世代のオヤジ達が、ビートルズをろくに聴いていなかったのにビートルズが好きだった、というのと同じである。リバプールとか一緒に行くと、やたらビートルズゆかりの観光施設に連れて行けとこのような団塊の世代オヤジは主張するので、ストロベリー・フィールズやペニー・レーン、キャバーン・クラブに連れて行っても、それらの場所の意味も分かっていなかったりするが、そういう団塊のオヤジと同様なのではないかと思うのである。
 ラーメンがあまり好きでない、とか言うものならば、ちょっとグルメじゃない、というか分かってないね、とか言われるような雰囲気が若者の間に漂っているような気がする。ということで、皆、若者はにわかラーメン評論家ぶりたがり、皆ラーメンが好きだと演じるのだが、実はそんなに好きじゃない、ということがゼミの課題をラーメンにして分かった。
 なぜなら、麺類でいえば好きな順で、うどん、そば、パスタ、ラーメンという私の方がラーメンをどの学生よりも食べたからである。そして、ラーメンが好きでもないのに、たくさんのラーメンを食べていたら、何となくラーメンが見えてきた。例えば、京都ラーメンは大きく2つ(第一旭系の近藤製麺を使う醤油豚骨系と極鶏に代表される一乗寺を中心としたどろどろ系)に分類されることが分かったし、つけ麺きらりがこれだけ支持されるのは麺が美味しいからだ、なども昔ならよく分からなかったが、たくさんラーメンを食べることで見えてきた。
 ビートルズのよさを知るには、ビートルズの曲を聴きまくることが必要である。というか、好きだったら聴きまくるであろう。私は、ほとんどビートルズの曲をジョンがつくったか、ポールがつくったかを判別できる(ジョージは当たり前)。これは、聴きまくったからである。ラーメンも好きではないけど、たくさん食べていたらちょっとラーメンが分かってきた。とはいえ、それでラーメンが好きだとは言えない。
 消費社会においては、自分のイメージが、何を消費するかで形成されてしまうという側面がある。そのため、自分が実際は消費していないのに、こういうことを消費しているという情報を発することで自分のイメージを操作しようとするのは、分からなくもない。ただ、自分が好きでないものや理解していないもので無理矢理、イメージを形成させようとしなくてもいいんじゃないかな。
 ちなみに、私も昨今のクイーン・ブームで『ボヘミアン・ラプソディ』を観たり、また、ちょっとクイーンの曲を聴いたりしたが、改めて気づいたのは、私が愛するジェネシスはもちろんのこと、クラプトンやイエス、ドゥービー・ブラザース、ZZトップ、ツェッペリン、イーグルスとかの方が個人的にはクイーンより好きだな、ということである。悪くはないけど、そんな素晴らしくもない。
 別にラーメンが好きじゃなくてもいいのだから、好きだといって自分を誤魔化す必要はない。ただ、好きじゃなくても、ラーメンがゼミの課題になったのだから、しっかりと課題をこなす(ラーメンを食べる)ことをしないと駄目だ。食べることによって初めて、ラーメンが見えてくるし、それによって、自分がラーメンを好きなのか嫌いなのかも分かる。それはラーメンという視座によって自分の存在を確認する行為でもあるのだ。逆にいうと、ラーメンをしっかりと食べていないから、ラーメンが好き、と無責任に言えるし、70年代の音楽をしっかりと聴いていなかったら、安易にクイーンが好きとも言える気もするのである。
 まあ、このクイーンのことに関しては、相当、反論もありそうなので、また機会があったらこの考えについてもう少し、丁寧に書いてみたいとも思う。とりあえず、今日の駄文では、若者はラーメンが好きというと格好がいいので、そう言っているだけで、本当は好きでないということを指摘したかっただけである。
 

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