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ケムニッツを16年ぶりぐらいに訪れる [都市デザイン]

 ケムニッツという都市がドイツのザクセン州にある。ザクセン州の中では、ドレスデン、ライプツィヒに次ぐ第三の都市である。人口は約25万人。東西ドイツが再統一される直前の1988年時点の人口はベルリン、ライプツィヒ、ドレスデンに次ぐ人口31万7千人。4番目に大きな都市であった。ということで、それなりの存在感を有してもいいと思うのだが、どうもドイツの国土政策的には鬼っ子のような扱いを受けている印象を受けていた。
 というのもケムニッツは高速鉄道のネットワークから完全に外されているからだ。2002年にケムニッツを訪れた時、ケムニッツはICでドレスデン、ニュンベルグと結ばれていた。ケルンと結ばれるICも走っていた。しかし2006年以降、ケムニッツは、ICEはもちろんのことICも走っていない。
 このように国土政策的には看過されている印象を受けるケムニッツであるが、人口減少は改善している。1988年から24%ほど人口が減少したが、そのトレンドは反転しつつあり、2016年に比べて2017年は500人弱だが人口は増加している。それでも、ケムニッツはどうも印象が薄くて、今一つのイメージを拭えていなかった。2002年に訪れた時も、色でいえば灰色。社会主義時代のこう陰鬱な雰囲気が都市を覆っている感じであり、街の中心も存在感溢れる市役所と都心部にある公園を除けば、記憶に残るようなものもなかった。日本でいえば水戸市のようなイメージである。
 さて、しかし、ドイツ人の知り合いが誕生日なので、パーティに顔を出して、ケムニッツの話をしたら、ケムニッツは素晴らしいと言う人が多数であった。知り合いは、ケムニッツに仕事があったら、エアフルトの仕事を捨ててケムニッツに引っ越すとまで言う。え!。エアフルトは相当、魅力溢れる都市だ。日本でいえば松江のようなイメージである。歴史的建築物もあり、旧市街地も賑やかで色彩豊かである。少なくとも、灰色といった都市のイメージはまったくない。その知り合いだけでなく、シュヴェリーン出身の2人もケムニッツはいいという。いや、悪いけどシュヴェリーンの方が人口は少なくても、はるかにケムニッツよりいいと思うけど。お城はゴージャスだし、湖はあるし、少なくとも都市のイメージが灰色ということはない。何を言っているんだ、とも思ったが、これは私がケムニッツを誤解しているからかもしれない、と思い、その翌々日にケムニッツに日帰りで訪れた。
 ケムニッツは現在、まともな鉄道との接続はライプツィヒとドレスデンとのRE(いわゆる特別料金がいらない快速列車)のみである。しかも、一時間に一本のみである。エアフルトはドイツ国土を東西に結ぶ線と南北に結ぶ線の結節点にある。シュヴェリーンもベルリン、ハンブルクとICEで結ばれている。ドイツ人はこのような高速鉄道のネットワークが都市の魅力というか、都市のアセットとして評価しないのであろうか。それとも、そのようなハンディがあっても跳ね返すだけの魅力がケムニッツにはあるのだろうか。
 ケムニッツの中央駅は、いわゆるターミナル型であった。駅舎のデザインは極めて今一つであり、ちょっと憂鬱になる。駅を降りても状況は似たようなものであり、活力のある都市の駅前という感じではない。トラムに乗って、中心市街地に行く。中心市街地は、結構大きなデパートがあったり、中心部は自動車が入れない歩行者空間(ペデストリアン・プレシンクト)になっていたり、そういう意味では悪くはない。市役所は本当に立派な建物であり、その貫禄はなかなかのものだ。とはいえ、エアフルトの中心市街地と比べれば、はるかにエアフルトの方が個性的で、色鮮やかで楽しい。私のエアフルトで働くドイツ人の知り合いは、エアフルトはイタリアのマフィアに支配された二流都市のように批判していたが、ケムニッツも社会主義時代は、社会主義マフィアに支配されていて、なんとカール・マルクス・シュタットと命名されていた。どっちが悪いかは一概には比較できないのでは、と思ったりした。そして、今でもカール・マルクスの巨大な銅像が街には置かれている。
 中心市街地だけでは分からないものもあるだろう、と郊外に出かけた。フットホルツという郊外ニュータウンである。人口が6万人も減っただけあって、この郊外ニュータウン(プラッテンバウ団地)においても建物倒壊の痕跡がみられた。しかし、老人用の介護サービス付きの住宅が新設もされていた。人口が増加し始めていること、高齢化が進んでいること、などから、そのような住宅の需要が増えているのかもしれない。
 フットホルツは高台に立地しており、そこから展望する南ザクセンの丘陵地のランドスケープはなかなか綺麗ではあったが、大きな川もなく、自然の変化もそれほどないこの都市のどこに魅力があるのかは、再訪しても分からなかった。帰りに中心市街地にあるレストランで食事をしたが、今回のドイツ旅行でも最も今一つの味であり、サービスはドイツという基準で照らしても相当、酷いレベルであった。
 ということで、イメージを改めようと思って訪れたケムニッツであったが、全然、イメージは改善しなかった。多少、その理解は増したかも知れないが、その人口規模に相当する魅力のようなものは感じられなかった。とはいえ、縮小政策を研究する私にとっては、ちょっと研究対象としては魅力がある都市であることは確かである。惨めなほど魅力が増すので。

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(旅情がほとんど感じられない中央駅)

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(旧市街地はなかなか魅力がある。ちょうど市場が開かれていた)

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(市役所の建物は立派で存在感溢れる)

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(トラムが縦横に走っている。後ろは再開発でつくられたビル)

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(郊外のニュータウン、フットホルツ)

タグ:ケムニッツ
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