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都市研究におけるケース・スタディ(事例研究)の基礎(1) [都市デザイン]

 都市研究において事例研究という手法を利用することは、結構、簡単そうだが留意点も多くある。事例研究をするうえで重要な点は、その事例を自分のよく知っている都市(事例)と比較することで、それを相対化させて、その優れた点、劣った点を客観的に評価することである。そのために有効なのは統計的な数字だったりするが、そのざっとした特徴を掴むうえでは都市観察をすることが重要である。それによって、その都市の特徴を捉えて、研究のための仮説を設定することができたりするからである。
 しかし、観察をするうえで重要な点は、その比較する都市が基本、共通の条件を有していることである。林檎とオレンジを比較しても、それは仮説の設定が間違ったり、誤った結論を導いたりしかねない。
 例えば、オランダのデルフトからベルギーのブリュッセルに鉄道で移動したのだが、一緒に行った大学の先生が「ベルギーは外国人が多いなあ、やはりオランダとは移民政策が違うのだろうな」と述べたのだが、彼のこの仮説(という感想)は正しいのであろうか。
 これは、デルフトとブリュッセルという二つの都市が、オランダとベルギーという国が違うことより、より大きな違いがあることを看過していることによって生じる誤謬である。その違いとは都市規模である。デルフトという人口10万人の都市とブリュッセルという一国の首都である人口117万人の都市を比較観察することで導かれるのは、国の違いというよりかは、都市規模の違いである。つまり、大都市は小都市より移民が多いという結論である。すなわち、オランダとベルギーとの移民政策を都市観察によって知ろうとするのであれば、ブリュッセルと比較すべきオランダの都市はアムステルダムであるべきであり、デルフトと比較すべき都市はデルフトと同様の大学都市であるルーヴェン(人口9万人ちょっと)であるべきだ。
 このように、事例研究をするうえで重要なのは、林檎とオレンジを比較することでの誤謬を避けることであり、そのためにも比較対象の特徴を予めある程度、知っておくことである。都市研究をするうえでは、人口、人口密度といった指標をある程度知っておくことは不可欠であり、そのようなデータ無しに都市をいたずらに比較しても、間違った結論を導く可能性があるので要注意である。

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