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現代語訳福翁自伝 [書評]

本書は、1898年、福沢諭吉が65歳の時に著したエッセイを齋藤孝が現代語訳をしたものである。明治維新前後を生きた稀代の思想家である福沢諭吉の考え方が読み取れて、たいへん興味深い。読んでいて気づいたのだが、職業的には私も福沢諭吉氏と似ている。いや、そのように論じることで批判の総攻撃を受けそうだし、その成果は天と地ほどあるかもしれないが、大学で教鞭を執っているし、本も著せば、翻訳もするし、講演もする。もちろん、野球選手でいえば福沢諭吉はイチローで、私は一応、プロ野球には所属しているが、打者でいえば打率2割前後、投手で言えば防御率5ぐらいのペーペーであるが、やっていることは似ている。ということで、この本の最後の文章をこれからの人生の指針にしようと思ったりもした。こういうことを書いて、人に伝えようとしている時点で、もう福沢諭吉とはエラい差のある小物であることを晒しているようなものだが、備忘録も兼ねてということで許していただければ有り難い。

「(前略)さて自分にできる仕事は三寸の舌、一本の筆より他に何もないから、身体の健康を頼みにしてひたすら塾の仕事を勉め、また筆を弄んで、種々様々の事を書き散らしたのが『西洋事情』以後の著訳です。一方には大勢の学生を教育し、また演説などして思うところを伝え、また一方には著者翻訳、ずいぶん忙しいことでしたが、これもごくわずかながら自分でやれることをやったものです。」


現代語訳 福翁自伝 (ちくま新書)

現代語訳 福翁自伝 (ちくま新書)

  • 作者: 福澤 諭吉
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2011/07/07
  • メディア: 新書



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