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『まちづくりの経済学』 [書評]

建築学科を出た先生による経済学の教科書的な本。前半はDCF法とCBA法について丁寧に解説しており、不動産経済学の教科書のような内容であり、地価に関する内容も含まれているが、後半部は「逆都市化」の話や、「高齢社会」の話なども出てきて、著者のまちづくりに対する熱い想いのようなものが書かれている。そして、著者がまちづくりの理想とする「美しいまち」は経済学者ではつくれないと最後に主張している点も参考になる。そして、その理由も書いている。しかし、まちづくりをするうえでは経済学の基礎を知らないと、経済学者が相手にしないので、この本を読むべきである、というようなことも書かれている。なかなか、そういう意味ではいい本ではないのだろうか。確かに、建築をしたりする人はあまり経済を勉強しないような印象を受ける。でも、経済学者はどう考えているか分からないが、経済学はそれほど難しくはない。いや、数式がうじゃうじゃ出てくるとなかなか分からなくなるが、基本的な考え方はそんなに難しくない。そのような経済コンプレックスを払拭して、まちづくりを考えていくうえの素養として経済学を学ぶうえでは、この本だけでは十分ではないかもしれないが、一つのきっかけにはなると思う。
 あと、この本が出されたのは2001年であるが、当時は確かにヨーロッパでもみられた逆都市化現象が、今ではまったく逆の再都市化現象がロンドンとかでもみられているのはちょっと驚きである。逆都市化論の何か前提に間違いがあったのだろうか。これは、私も時間があればチェックをしてみたい興味深いテーマである。


まちづくりの経済学―知っておきたい手法と考え方

まちづくりの経済学―知っておきたい手法と考え方

  • 作者: 井上 裕
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: 単行本



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