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都市資源が既に不足している渋谷で開発をするのは賢明ではないだろう [都市デザイン]

宮本憲一は『都市政策の思想と現実』において、「資本の都市問題」に関して述べている。そこでは、それは「生産の社会化がすすみ社会的一般生産手段の需要が大きくなったにもかかわらず、公共経済が対応できず、あるいは資本の過集積のために都市の資源が不足する問題」であると述べている。そして、それは「都市問題」というよりかは「都市経済の問題」であると言及している。そして、都市経済と都市問題を混同させてしまうと、都市政策も混乱したり不完全になったりすると指摘する(p.37-38)。
 さすがに都市の置かれた状況を鋭く突いている。東京が抱えている問題は、資本の過集積である。既に飽和しており、また経済が成熟化し、国としても人口というマーケットが減少しているにも関わらず、さらに投資が進んでいる。先日、渋谷に降りて、その発展途上国のようなビル開発の進み具合に愕然とした。なぜなら、このようなビルを開発するだけの公共経済が不足していることが明らかであるからだ。上下水などのインフラも不足しているだろうが、目に見えて分かりやすいのは交通であろう。これだけのビルが建設されることで、発生集中する交通需要は相当のものがあるだろう。それであるにも関わらず、新しくつくられた東横線の渋谷駅のホームの処理能力は現時点でも既に危機的な状況にあるほど飽和している。私は次女が渋谷の高校に通っているので、東横線の渋谷駅のホームの狭さと処理能力の不足が本当に心配なのだ。これ以上、交通需要を増やしたら、朝のラッシュアワー時にちょっとダイヤが乱れただけで、ホームに立っていられずに落ちる人が出るだろう。
 ビルを建設している人は、そんなことは知ったことがないのだろうが、渋谷駅の資本不足は既に多くの不利益をもたらしている。私は、池袋以北に行く時はそれまでは渋谷駅で乗り換えていたが、現在は160円余計に払って恵比寿駅で乗り換えるようにしている。それは前述したように渋谷駅を利用することの不安と、ホームでのエレベーター待ちの時間や新駅が出来たことで乗り換え時間が増えたので、160円払っても恵比寿駅で乗り換えた方が、効用が相対的に高いと考えているからだ。
 そのような不便な場所に、渋谷というブランドだけで開発をして、さらに渋谷の資源不足を顕在化させてどうするのであろうか。そのような開発をしている人は一度、この宮本憲一氏の著書でも読んで再考するといいと思う。


都市政策の思想と現実 (立命館大学叢書政策科学 (1))

都市政策の思想と現実 (立命館大学叢書政策科学 (1))

  • 作者: 宮本 憲一
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2011/05
  • メディア: 単行本



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