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ティファニーで朝食を [映画批評]

 オードリー・ヘップバーン主演の1961年の映画を、今さら観た。自由気ままに無責任に生きる主人公のホリーの生き様、そしてオードリーの演技は、私の年齢のせいなのかもしれないが、まったく惹きつけるものもなく、なんでこのような女性に男性が惹きつけられるのかを理解するのが難しかった。しかし、おそらく1960年代という時代においては、彼女のように解放された女性というのはステレオタイプを打破した魅力的な女性と映ったのであろう。日本では『東京ラブストーリー』の赤名リカが、当時、女性の新しい生き方を日本人に提示したかと思うが、そのようなインパクトをホリーもアメリカ社会に与えたのかもしれない。ということで、1960年代のアメリカの世相を知るうえでは、興味深いかもしれないが映画は個人的には面白いものではなかった。
 あと、このホリー役のオードリー・ヘップバーンはミス・キャストだと思う。男を振り回す頭は軽いが魅力的な女性という役にオードリーは不適である。あの鼻筋が綺麗に通って、深遠力があるような魅力的な眼は、どうしても知性を感じさせてしまう。というか、本人は英語以外にも4ヶ国語を操り、晩年をユニセフの仕事に捧げる、などホリーとは似ても似つかぬキャラである。演技をさせる、といってもどうしてもその人の本質のようなものが滲み出てしまうだろう。これはマリリン・モンローが演じたら、むしろもっとずっと作品としても説得力があって魅力的なものになったのではないか、と思わずにはいられない。
 さて、この映画のもう一つ興味深い点は、映画の流れからは本質的ではないが、日系人(日本人)ユニオシの存在である。怒りっぽく、信用できず、黒縁、出っ歯、低身長といったユニオシの演出は、当時のアメリカ人の悪意というか侮蔑的な日本人のイメージが描かれていて興味深い。私は少年時代、アメリカで過ごしたので、こういうように日本人がアメリカ人に見られているということはよく理解できるが、日本人はちょっとこの点についてあまり自覚していないと思われるので、この映画は1960年代のものではあるが、我々はこのような差別対象であるということは理解しておいた方がいい。差別をされる側にいることを理解すれば、中国人を差別する気持ちがいかに醜悪であるかが分かるであろう。
 あと、もう一つ、この映画で唯一、いいかなと思ったのは、映画全般を通して流れる「ムーン・リバー」である。特にヘップバーンが歌う「ムーン・リバー」の場面はよかった。それを除くと、アメリカ研究者かヘップバーン・ファン以外は他の映画を見たほうがいいような気がする。


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