東ベルリンから来た女 [映画批評]
ドイツ映画らしい重厚な作品。医師という職業倫理を優先させるのか、恋人との自由社会での将来を取るのか。社会主義という雁字搦めの社会の中で、いかに自分の意志を貫き通すことができるのか。その葛藤の中で揺れ動く女医を演じるニーナ・ホスの演技は、観るものにも緊張を与えるほどの存在感を放つ。ただ、映画はその後の展開が予断を許さないような状況で終わってしまう。その後、どうなるか大変気になる。1980年を舞台にした作品だが、その10年後に壁が崩壊して、この旧東ドイツの監視体制も瓦解する。人類の歴史は、人間性を抑圧しようとする動きと、それを押し返そうとする動きとの不断なる対立の歴史なのだな、と共謀罪が議会を通った国に住む人間としては鑑賞後、感慨深い思いを持ったりした。
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