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両神山荘に泊まり、地方から人が流出するのは、昔あった経済資源がなくなったからだと確信する [サステイナブルな問題]

 両神山荘に泊まる。山荘というので山小屋のようなものをイメージしていたら、ちょっとした民宿のようなところであった。そこの親父さんと話をする。家屋が横に長いのでお蚕をしていたのか、と尋ねたら、そうだとのこと。昭和45年頃まではしていたそうである。富岡製糸工場があったこともあり、秩父一帯は養蚕が盛んのようであつた。お蚕を飼っていたときは随分と潤っていたそうである。それに加えてコンニャク。ここはコンニャクは15年くらいしかやらなかったそうなので、下仁田や南牧村とは違うようだが畑のダイヤといわれたほどの商品作物である。これでも随分と現金収入で潤ったであろう。さらに冬は炭焼をしていた。これでも現金収入が入ってきた。そして極め付けは森林。ここの親父さんは山を所有していて、杉は100万本植えたと言っていた。その数字はともかくとして、昭和40年頃はその価値といつたらとてつもないものであり、埼玉銀行の頭取が挨拶に来たという話も納得する。
 集落には酒屋があった。一見するとまだ営業しているようであったがもう閉店したようである。ひと昔前までは集落で余裕で酒屋を維持することが出来ていたのである。勿論、酒屋の営業に大きなダメージを与えたのはスーパーマーケットが麓に出来たことが大きい。ただ、その結果として集落の生活環境は大きく劣化した。この現象は南牧村と全く同じである。
 両神に来たのは始めてであったが、改めてほんの50年前までは、ここのような森林地帯は大変経済的には豊かであったということを思い知らされる。そもそも経済的に豊かであったから、当時は人口も増えていたのである。養蚕、コンニャク、炭焼といった優良な産業が現存していれば現在でもここで生活する人は少なくないであろう。
 逆にいえば、都会人のロマンにだけ頼ったようなIターン政策に力を入れても根源的な地域の維持には繋がらないのではないだろうか。人が地方から流出する理由は、その人によって取捨選別であろうが、最大の理由はおそらく経済的なことである。経済的な豊かさが確保出来れば、人は外国に行くことさえ厭わない。
 それを失ってしまつたからこそ、地方から人口が減っているのである。ということを改めて確信させてくれた両神山荘の親父さんの話であった。

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