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ツヴィカウ [ドイツ便り]

 ツヴィカウという都市に訪れる。なんか、何のイメージもなく、ただZから始まって次がWなので、アルファベット順だったら最後に来る都市だよな、というようないい加減なイメージしかこれまで抱いていなかった。それまで大した関心を寄せたこともなかった。
 しかし、ヨーハンゲオルゲンシュタットに行くことを決め、そのためにはどこか近くに泊まった方がいいだろうということで玄関口であるツヴィカウに泊まることにしたのである。さて、行くと決めてちょっと調べてみたら、なんと相当、大きな都市であることが分かった。エルツ山地の麓に拡がる、ドイツではルール工業地帯に次ぐザクソンの三角形と呼ばれる工業地帯の一翼をも担う。これはライプツィヒ、ドレスデン、ケムニッツなどを含む工業地帯である。
 人口はほぼ10万人であるが、商圏は48万人。また、ザクセンの自動車工業の中心地区であり、アウディ、トラバントはここが発祥のようである。もちろん第二次世界大戦後、アウディは旧西ドイツに逃げるが、その創業の地がツヴィカウとは知らなかった。
 さて、ただプラウエンやコットブスのように旧東ドイツの10万程度の都市同様に、ツヴィカウの駅前もおそろしく寂しいものであった。ここからはトラムで中心市街地まで結ばれているのと、後で気づいたのだがローカル鉄道であるフォクトランドバーンがツヴィカウ・ゼントラムという中心市街地にある駅まで入り込んでいたのだが、私は中央駅で降り、トラムは土曜日と日曜日には運転されていないことを知り、タクシーで中心市街地まで行ったのである。
 さて、ツヴィカウはご多分に漏れず、城郭都市であり、しっかりとした城壁がつくられていたようで、その内部が中心市街地として、歴史的街並みを形成している。興味深いというかユニークなのは、中心市街地内にプラッテンバウ団地がつくられていることである。戦災か何かで破壊されたのであろうか。通常、アイゼンヒュッテンシュタットのような新たにつくられた都市を除けば、プラッテンバウ団地は旧市街地にはつくられない。コットブス、ライプツィヒ、エアフルト、プラウエン・・・、ホイヤスヴェルダなどのような計画的工業都市でも旧市街地がある都市では、そこでの建設は避けられる。しかし、このツヴィカウは違う。とても興味深いな、と思ったら、ここが、今年度のヨーロッパ最大の学生コンペの対象地であることが分かった。しかし、これは極めて難しい都市的課題である。どんな案が出るのか興味が湧く。プラッテンバウ団地のそばをムルデ川が流れており、ここから中心市街地をみると、プラッテンバウ団地と旧市街地の歴史的建物が同時に見られる。
 また、縮小都市であるにも関わらず、そして人口が10万人程度であるにも関わらず、旧市街地は人で溢れていた。ここらへんは本当に不思議である。トラムも走っているのは、旧東ドイツの都市に共通していることなので、いまさら驚かないが、中心市街地は自動車がほとんど入れないようになっており、コンパクト・シティとして機能する条件をしっかりと維持しており、また成功していると思われる。
 南ザクセン地方は、プラウエン、ツヴィカウ、ケムニッツ、デッサウ、ゲラ(州はチューリンゲンであるが)といった比較的大きな都市があまり距離を置かずに立地している。その集積はルール地方のミクロ版のようで、大変興味深い。個々の都市の規模は大きくなくても、マクロな地域レベルでみると潜在的な可能性を感じるのであるが、どうなのであろうか。人々が捉えるほど縮小はしていても、問題は深刻にはならないような印象を受ける。

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(中心市街地の街並み)

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(中心市街地を歩いている人は多かった)

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(旧市街地を離れると、住宅地は空き家が目立つようになる)

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(旧市街地の外部の住宅地も結構、手がつけられていた)

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(若者の荒んだ気持ちがうかがえる落書き)

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(アンチ・ナチの落書き。ザクセン州であっても、皆が右翼的という訳ではない)
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