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リオデジャネイロのファベラ [都市デザイン]

リオデジャネイロのファベラの特徴は、高級住宅地に隣接して存在していることである。これはアメリカの都市などと大きく異なる点だ。アメリカの都市だと高級住宅地と貧困地区が隣接することはほとんどない。例えば、サンフランシスコはロシアン・ヒルの高級住宅地とその麓にある低所得者の住宅地区との間に日系人のコミュニティを計画的につくった。これは第二次世界大戦で強制収容した日系人を住まわせるための計画であったが、拡大する低所得者の住宅地区との間に「人の壁」をつくったのである。酷いよねえ。あと、低所得者より敵国であった日系人の方が許されたというのも興味深いことである。
 さて、しかし私がここで書きたいのはリオデジャネイロのファベラに関してである。なぜ、高級住宅地にこのようなファベラが立地しているのか。それは、コパカバーナとかを建設するときに各地からやってきた土方の人達が、働いている時に丘に住宅をつくり、そこで生活をして、仕事がなくなった後もそこに住みついたからだそうだ。ブラジリアと同じ要因である。興味深いのは、ファベラが丘に張り付くようにつくられていることだが、これはこのリオデジャネイロという素晴らしく美しい景観を有する都市においても、最も素晴らしい展望を得られるところがファベラに占拠されていることである。土地の所有者などの関係を私は理解していないが、その発展の経緯は興味深い。
 また、ファベラは丘陵地にだけ発展している訳ではない。今回、私は元警察官のUBER運転手を雇ったのだが、彼は警察官だったこともありファベラ事情に非常に詳しかった。私がポルトガル語が相当、へたれなので、彼の言っていることはほとんど理解できなかったが、マレ地区という都心から北西部に広がる一帯はとんでもない地区だということであった。
 リオデジャネイロの映画といえば「黒いオルフェ」と「シティ・オブ・ゴッド」を思い出す。両方とも、ファベラを舞台にしている。「黒いオルフェ」の切なさや哀愁の世界と、「シティ・オブ・ゴッド」のやるせない絶望感とは、ロマンがあるかないかという違いはあるかもしれないが、何か通底するものを感じさせる。リオデジャネイロは、その恐ろしいほどの美しさゆえに、他の都市より死を感じさせるようなところがある。メメント・モリを意識させられる都市であり、それは、リオの美しさだけでなく、ファベラの醜さもそうである。

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(息をのむように美しいイパネマ海岸も振り返ると丘に張り付いているファベラがみえる)
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