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クリチバの凋落の大きな要因は自分で考えることをしなくなってからだ [クリチバ]

 クリチバは訪れるたびにどんどん悪化している。今では普通のブラジルの都市のようである。それは何が要因なのであろうか。いろいろな要因が考えられるが、セルジオ・トッキオ環境局長によれば、クリチバが考えることをしなくなったからだと指摘する。それまではクリチバは自分で考えた。しかし、最近の市長はクリチバの政策的な理念を持てなくなっている。レルネル時代の環境都市、タニグチ市長の人間都市(一部、私の著書のタイトルから取ったという人がいるが確認はしたことがない。流石に尋ねるのも恥ずかしい)などの理念、コンセプトがタニグチ氏以降の市長には不在なのである。
 そのような状況になると、世界銀行などがいろいろとアドバイスをし始める。JICAとかもやってくる。クリチバは自分で考える街ではなくなった。しかし、名前が知られているから、国際コンサルタントにとっては、その仕事をするのは箔を付けることにもなるので、非常に熱心に営業するのである。考えることをアウトソーシングし始めているのがクリチバのこの10年間ぐらいの傾向であるのだ。
 トッキオ局長による解説によれば、この何年間はクリチバが有名だったので、世界がクリチバを認めてくれた。それで、自分が何をしていいかも考えなくなってしまった。都市の場合は、一年間考えなかっただけで、どんどんと劣化していく。都市は凄いスピードで動いているからだ。人類の歴史がそうだ。頑張ってやっている時は、周りから集まってくる。頑張りがなくなった場合、頑張らなくても簡単だ、とそう思いながら市長が市政を運営すると、どんどんと劣化していく。立候補をする時に、街づくりなんてそんなに難しくない、と考えるとうまくいかない。街を維持するには非常な努力がある。レルネルさんがやったことをそのまま真似をすることはできる。だけど、人は代わりにならない。書くことを習った。しかし、それだけでは十分ではない。本を書きなさい、といわれても簡単にはできない。
 また、トッキオ氏はレルネルさんへの多少、批判する。
「レルネルさんは現役の時は、学校のように皆が集まって、同じ目的、同じ考えをもっていた。レルネルさんが学校をつくるのを忘れて、自由にしてしまった。そうすると、レルネルさんの考えが薄れていってしまった。ジャイメ・レルネルさんが学校をつくるのを忘れてしまった。」
 レルネル氏の驚くほどの都市経営の才能が、しっかりと継承されず、また、それを引き継いだ人達が、クリチバが上手くいったのはレルネル市長の能力ではなく、誰でも出来るというように過小評価をして、考えることもしなくなった。考えることをせずに、考えることをアウトソーシングし始めるとその組織は徐々に崩壊していくのである。
 などと書いていて、私は考えることをアウトソーシングされるコンサルタントで39歳まで働いていたことを思い出した。ちょっと複雑な気分である。

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