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エスピリト・サントの軍警ストライキで殺人件数が4倍近くに上昇 [グローバルな問題]

日本の新聞はほとんど報道していないようだが、ブラジルのエスピリト・サント州で2月4日から軍警ストが行われ、10日間で殺人事件が143件も発生した。これは大変な事件だ!と思ったが、昨年同時期で38件も殺人事件が起きていたので、例年のこの期間の3.8倍ほど増えたということである。143件という数字に最初は衝撃を受けたが、そもそも例年でも38件。そういうことを考えると、この4倍というのが凄い増えたのかどうかが若干、分かりにくい。
 そもそも、ここらへんの殺人事件の数の多少といった感覚は日本人には分かりにくい。日本は全国内で毎年殺人事件は1000件程度である。エスピリト・サント州は人口が388万人なので、日本の殺人件数を当てはめると年間で32件程度となる。まあ、ざっと平均でも日本の40倍ぐらいの殺人件数が起きているということだろうか。40倍が150倍になったというのは驚くべきことではあるが、そもそも平常時の殺人件数が多すぎる。さて、それにしても警察が仕事をしていない隙に人を殺そうと思う人がいるというのは、根本的に相当、恐ろしい話である。ただ、その詳細をみると143件のおよそ半分にあたる67件は、州都ヴィトーリアの周辺にあるセーラ市、カリアシカ市、ヴィラ・ヴェーリャ市で発生したそうだ。この地域は貧しい地区である。
 日系人向けの新聞(ジャーナルニッケイ)によれば、警察は、殺人事件の原因を、①軍警不在を利用した麻薬密売者同士の拠点争いや代金取立て、②仲間を殺された警官が法の手続きを踏まずに起こした個人的な復讐や、市民の恐怖感をあおるための行為、③別の犯罪集団が起こした行為(軍警との関係の有無は不問)の三つに大まか分類しているそうだ。また、殺人事件の被害者の多くは17歳から22歳で、警察の人員が手薄な場所や、商店での略奪、強盗事件などの最中に殺された例が多かった。ギャングの抗争がらみかという気がしないでもない。
 2月13日には1000人の軍警が仕事に復帰したが、まだ10000人以上がストライキをしているそうだ。また、このストライキ中は3100人の連邦政府の陸軍と連邦政府警官が入ったので、まったくの無法地帯というような状況にはならなかったようである。まあ、それでも鬼の居ぬ間に洗濯ではないが、軍警の居ぬ間に人殺し、というような事件が起きてしまった訳である。
 まあ、そのようなメンタリティをもっている人が多いというのもショックであるが、その前に軍警がストライキをしてしまうというデタラメさも唖然とする。そもそも軍警のストはブラジルでも法律違反だそうだ。州政府は703名ほどを有罪にすると考えているそうで、有罪になると8年〜20年の禁固刑になるそうである。その背景には月収867米ドルという低賃金という状況があるそうである。このストライキを家族は積極的に支援し、また地元住民も最初は支持したそうである。しかし、この殺人の増加や泥棒の増加などから地元住民もそろそろ止めてくれ、と言い始めているそうだ(http://www.aljazeera.com/news/2017/02/espirito-santo-police-return-work-murder-wave-170213090102756.html)。
 エスピリト・サントというのは「聖なる精神」という意味である。まさに名前負けという気がする。

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