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『香港』倉田徹等 [書評]

2014年秋に起きた香港の雨傘運動の背景を理解するために、日本人と香港人の著者等は香港の歴史、そして文化等を分析することで、それを解読していく。そこから出てきたキーワードは、中国を常に意識することによって育まれてきた「自由」への希求である。それは、まず「生存する自由」であり、それから「儲ける自由」へと進化し、さらに「文化の自由」へと続くと著者は分析する。そして、雨傘運動が起きたのは、中国の台頭によってその「自由」が不安定になったことで、むしろ強く求められることになった「自己決定の自由」であると著者らは考察する。本書は、この中国という不自由な枠組みの中で、自由を希求して戦う香港人からすると、日本は民主政治の制度を持っていても、その政治的無関心から、その自由は「錆びつき、劣化」していると結びで述べている。「雨傘運動」、そしてその背景を解読するキーワードとして「自由」という概念を駆使して、香港の姿を浮き彫りにさせる興味深い本である。

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

  • 作者: 倉田 徹
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/12/19
  • メディア: 新書



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