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人口減少著しい大阪府能勢町を訪れる [サステイナブルな問題]

 人口減少著しい大阪府能勢町を訪れ、ついでに役場にも取材をさせてもらった。能勢町は大阪府の最北部にあり、大阪の屋根とか大阪のチベットとか言われている。2000年に人口は1万4千人ちょっとでピーク。2014年は人口が10605人。15年間で25%も人口が減少した。日本創成会議では消滅可能性自治体ワースト24という評価だそうだ(しかし、本当、この消滅可能性で順位付けをする人の性格を疑う)。
 新大阪でレンタカーをして訪れたのだが、箕面のトンネルを越えたらいきなり雪が降っていて驚いた。川端康成の「雪国」のようなところだ。そして、箕面のトンネルを越えても随分と距離がある。能勢電鉄という路線があるので、名前からてっきり能勢町まで通っているのかと思っていたのだが、能勢電鉄はその手前の能勢口という駅で止まっていた。この能勢口は妙見山に登山するための駅であり、そこから能勢町までも結構の距離があった。関東のものからすると、「ここが大阪?」と驚くような山間の地である。ちなみに、鉄道で能勢町にアプローチするためには、山下という駅からバスに乗り換えていくようである。ただ、バスの本数は少ない。
 取材は午後一だったので、その前に昼食を取ったのだが、そのお店はいわゆるジビエ料理屋であった。私はそこで「猪鍋」を注文したが、そのような野趣溢れる食事をするのがしっくりくるような土地であった。
 さて、そんな山間の能勢町ではあるが3つのニュータウンがある。民間が開発したものである。このニュータウンは、能勢ニュータウン平和台、能勢ネオポリス、ロイヤルランドの3つである。これらを3つとも訪れたのだが、ほとんど急斜面を切り開いて開発されたもので幹線道路からのアプローチも悪く、道路も狭く、言い方は悪いがブラジルのファベラのように計画的につくられていないという印象を受けた。なぜ、このような山間の地に、このようなみすぼらしい住宅地を開発したのであろうか。というか、町には規制とかはないのか。多くの疑問を持たせるような住宅地であった。
 これらについて町役場に取材をさせてもらったら、いろいろと理解できた。まず、能勢町は当時、都市計画がなされていなかったので基本的に、住宅開発に関しての規制はなかった。これらのニュータウンはみな、山林分譲であったようだ。都市計画がつくられたのは平成3年からである。それ以前では開発許可は不必要であった。宅地造成の区域が決められたのは平成5年。そういうこともあって、きっちりとした開発はされていなかった。多くのニュータウンは、この都市計画が策定される以前につくられたので、砂防許可などは受けている筈が、他はほとんど無許可で開発されたようであると役場の人は述べていた。
 そのようなこともあり、都市計画が策定された時は、基本的には市街化促進をしないことを目的とし、市街化区域が1%、市街化調整区域が99%に指定された。しかし、現在は能勢町の人口減少が著しく、市街化促進をしないどころか、まったく逆の状況を心配しなくてはならないような状況になっている。取材をする前は、これらの山林分譲型ニュータウンにおいて人口減少が著しく進んでいるのかと思ったが、既存集落もニュータウンも同様に減少しており、全体的に人口が減少していることが分かった。地区ごとにみるとこの20年間で42%も人口が減少しているところがある。町全体だと24%の減少である。
 人口縮小していく中、土地利用規制は多くの場合、マイナスに機能する。そのためになるべくない方がいいのだが、能勢町は99%を市街化調整区域に指定してしまったので、新たに建物をつくるのは規制が厳しい。人口減少していく中で、新築のニーズがあってもなかなか建てられない、というジレンマに陥ってしまった。そこで、市街化調整区域に建物をつくる基準を設けた。いわゆる分譲の住宅は認めないが、レストランなどを自分が経営する場合や、自分が住む住宅に関しては新しく建物を建ててもいいことができるよう「市街化調整区域における地区計画のガイドラインに基づく地区計画制度や開発許可制度の弾力的な活用等」で対応することにしたのである。
 これは2016年10月に施行したばかりなので、相談はぽろぽろと来ているが、許可はまだ出していない状況あるそうだ(2017年2月事典)
 とはいえ、このような対応をしても、空き家が埋まる見込みはないそうである。
「大阪のチベット」とは言われていても、腐っても大阪府である。大阪に通勤するベッドタウンとしての可能性はないのだろうか。現状では、大阪市内まで通っているのは1割に満たないそうである。多くは、川西とか池田とかに通っているそうである。ニュータウンに住んでいた人達の子供達は、仕事が会社勤めだったりすると、便利なところに越していく。具体的には川西などに引っ越すそうである。
 ニュータウンはどのぐらいの価値があるのか。実際は、もう土地だけの価格しかつかないそうである。ただし、線引き以前の建物だと再建築は認められる。とはいえ、一平米1万円するかどうかの価格だそうである。
 あと縮小都市の問題である学校についてであるが、生徒が減少しており、小学校一学年一桁でクラス替えもできない状況であったそうである。それまで中学校2、小学校6あったのを2016年4月に統合して中学校1、小学校1にした。一つの敷地の中で中学校、小学校を設けたのである。スクールバスを走らせることで通学難には対応している。統合による子供のメリットとしてはたくさんの生徒がいることである。同窓生の数が増えた方がよい。小中で600人。2クラスぐらいはある。
 高校生だが、下宿をするまで環境は悪くないそうである。ほとんどは自宅から通学するそうである。
 能勢町の問題としては交通が不便であることと、買物が不便であることが挙げられるそうである。要するに生活をすることがどんどん不便となっているということだ。これは、イタリアのスローシティが、人口は少なくても、生活は不便にしていない、ということとは対照的である。それは、効率性やスピード、経済性ばかりを優先した国土政策を推し進めてきているからだろう。たとえば、北海道の留萌線や島根県の三江線が廃線されることが決まったが、地方を活かそうというのであれば、これら生命線を外すという判断というのはあり得ないと思うのである。それは、病人に点滴をするのを止めるようなものである。バスは一時間に一本しか走っていない。車が運転できなくなると移動手段がないのが能勢町の状況である。それじゃあ、豊かな生活を送ることは難しいと思う。
 現在の能勢町は、町内だとスーパーマーケットが一軒だけある。ただ、車がないとここで買物をするのも難しいようである。コミュニティ・バスも導入したが、あまり利用されなかったので、今後はタクシーの迎えのようなサービスを考えているそうである。さらに、能勢町では高齢化が進み、一人暮らしが増えており、今後もどんどん増えていく傾向にある。買物難民は深刻な問題となっているのだ。
 私はこの10年間ぐらい、おもに旧東ドイツの縮小都市の実態、政策などを研究してきたが、ふと日本を振り返ると、日本も同じような課題を抱えていることを改めて認識した。多くの斬新な政策を展開しなくてはならないが、一番、重要なのは地方分権化して、中央政府が都市計画などの権限を譲渡することであると思う。

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(開発から20年以上経っても、まだ空き地が多い分譲地)

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(まったく買い手がいなかった区画もある)

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(ここも空き地が多い)

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(多くの区画が空き地であることが分かる)

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(隣のニュータウンでも空き地が多い)
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