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バークレーでのデモ抗議事件の背景を考える [トランプのアメリカ]

私の母校でもあるアメリカのカリフォルニア大学バークレー校で2月1日夜、ドナルド・トランプ大統領を支持する右翼ニュースサイトでスティーブ・バノン首席戦略官が責任者である「ブライトバート・ニュース」の編集幹部マイロ・ヤノポロス氏の講演に反対するデモ隊が暴徒化し、講演が中止となった。ヤノポロス氏の講演に反対するデモ隊の抗議は過激化し、建物に放火し、結果、警察はキャンパスを封鎖した。
 この事件を踏まえて、「バークレー校共和党クラブ」メンバーは、「抗議デモ参加者が言論の自由を保障した合衆国憲法修正第一項を踏みにじった」と批判し、さらに「フリースピーチ運動は死んだ。今日、バークレー校共和党クラブが持つ、言論の自由を定めた憲法上の権利は、マイロ・ヤノポロスの講演ツアー阻止を目論んだ犯罪者たちと悪党どもに口封じされた」と述べた。
 「言論の自由」が大学のアイデンティティでもあるバークレーの学長は「ヤノポロス氏の発言内容を理由に中止するのは憲法に反する」との声明を出した。また、学生による平和的な抗議活動に、「イベントを中止させるため、暴力的かつ破壊的な振る舞い行為に及ぶという準軍事的な戦術を用いる、武器を持った黒装束の人々100人超が侵入してきた」とも述べている。
 そして、トランプ大統領は得意のツイッターで、「カリフォルニア大学バークレー校が言論の自由を許さず、異なる見解を持つ罪のない人たちに暴力を振るうのなら、政府の資金がなくなるかもしれない」と書き込み、大学への政府の資金を止める可能性にも言及し、抗議デモに対抗する姿勢を示した。

 さて、この事件は私が卒業生であるということもあり(私は1993年に二つの修士を取得してバークレーから卒業している)、心を痛めるとともに注目をしていたのであるが、この事件の背景には二つの可能性があると捉えている。
 一つは、マドンナのトランプ反対の発言に関しての批判の意を込めて書いた1月23日のブログ(http://urban-diary.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23)でも言及したことであるが、右も左も暴力で解決するような姿勢が、不幸な形で顕在化してしまったことである。それが「言論の自由」の戦いの先陣にたち、学生運動などを展開してきたバークレーでも、この暴力で解決というアメリカの病のようなものが起きてしまったのかという理解である。
 もう一つは、ロベート・レイ教授がCNNで指摘しているように(https://www.youtube.com/watch?v=K977LL87rd8)、マイロ・ヤノポロス氏等が陰謀を企てたということである。ヤノポロス氏がこの事件後の取材で、勝ち誇っているように「それみたことか」のような表情をしていることが、この説により説得力をもたらせている。彼はなぜか、右翼系の全国ネットのフォックス・ニュースのスタジオに翌日、登場して話をしているが、まあ、その姿からも彼がまともな人であるとは思えない。私が言うことが違うと思う人は、このフォックス・ニュースでの彼の取材をみてください。(https://www.youtube.com/watch?v=GK6v8VFGPAo)。
 さて、どちらにしても大変困った事態ではあるのだが、バークレーにとっては後者であるとまだ救いがある。しかし、後者であったとしたら、ものの見事に引っ掛けられた訳であり、そのダメージはとても大きなものがある。これが引っ掛けであったことを全力で証明するように動くべきであろうが、「真実」の意味が大きく後退しているアメリカにとっては、それがどの程度意味を持つかも個人的には不安である。どちらにしても、ブライトバート、そしてヤノポロス氏にとっては大きなプラスになり、そして、それはトランプ大統領にも極めて有利に働いている。バークレーでのトランプ支援者は1割にも満たないと考えられるからである。トランプがすぐにバークレー批判をしたことには意味があるのだ。それは、バークレーが反トランプの西海岸の一つの拠点であったからである。
 あと、後者であるとの前提ではあるが、トランプ側というか、正確にはスティーブ・バノン首席戦略官だが、彼らの知的レベルは相当高いと思って、注意をした方がいいであろう。自らをダース・ベーダーと例えたこともあるバノン氏は危険思想の持ち主であることは明らかだが、ハーバード大学の経営大学院卒のインテリである。ダース・ベーダーも単に邪悪なだけでなく、賢いから、あそこまで巨大になったのである。このような強敵に対抗するには、まだある程度、平和の余波が残っているうちに若者は勉強をするべきであろう。勉強をしないと酷い目に遭うのは確かだ。
 どのような背景がこの事件にあったのかは、まだ藪の中ではあるが、トランプ側は、このような卑劣な罠を仕掛けてくるぐらいの前提で対応した方がいいだろう。感情にとらわれたり、相手の常識などに期待をしたら、酷い目にあうのはこちらである。「正直者が馬鹿を見る」というのは、何もアメリカだけの話ではなく、最近では全世界規模で広がっているが、特にトランプのアメリカは酷い。そして、このような人物を大統領に選んでしまった人が半数近くいるアメリカ合衆国という国への絶望が、私の中では広がっている。私の娘はアメリカ国籍と日本国籍を持っているが、とても今のアメリカをみせて、アメリカ国籍を取れとは勧められそうもない。
 
 

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