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コルドバのメスキータを訪れる [地球探訪記]

 コルドバのメスキータを訪れた。1984年に世界遺産に指定された785年にイスラム教の寺院として建設され、その後、13世紀にレコンキスタによってイスラム教徒が駆逐されるとカトリック教会堂として転用されたという、折衷建設である。
 メスキータは大きく、イスラム教寺院の「塔」であるアミナール、そしてオレンジの木が植えられた中庭、そして「礼拝の間」から構成されるのだが、圧巻なのは「礼拝の間」であろう。「礼拝の間」の規模は175メートル×135メートルの約2.24ヘクタール。そこには何と850本の柱が定間隔に並んでいる。入り口付近は特に光があまり入らず、薄暗いので、そこにいると、まるで森の中にいるような気分になる。
 この広大なる屋内空間は、しかしつくられた時代によって随分と様相が異なる。そもそも、最初はモスクとしてつくられていたのに、途中から大聖堂になってしまったので、イスラム教とキリスト教のデザイン・コンセプトが折衷されているので、ある意味では、ご飯にマヨネーズをかけたような違和感さえ覚えてしまう。コンセプトがしっかりとしていない幕の内弁当みたいな感じである。
 入り口から出口に向けて、建物が拡張していった経緯ごとに、スタイルや意匠、さらには採光による明るさまでもが変化していく。したがって、歩いていると徐々に空間が変化をしていくのを感じることになる。具体的には入り口から出口に移動すると、古い→新しい、イスラム教(モスク)→キリスト教(大聖堂)、暗い→明るい、オーセンティック(石とレンガが交互に貼り付けられている)→偽(レンガはペンキで塗られる)といった感じで変移する。私は個人的には入った直後の、薄暗くて、古めかしいモスク的な空間が最もオーセンティックに感じられ、気に入った。逆に、大聖堂の空間は、モスクに接ぎ木したような建築空間であり、どうも好きになれない。大聖堂はやはり大聖堂としてつくられた建築の方が迫力もあるし、また、同じモスクから大聖堂に転じたセビージャのものの方が、モスクとしての名残をそれほど残していないので返ってしっくりくる。
 とはいえ、この柱とアーチの連続性がつくりだす異様な空間は、まさに体験するのに値する。二つの文化が交わることが、必ずしも相乗的な効果をもたらしたとはいえないような印象を受けたが、宗教が異なるにもかかわらず、その価値をしっかりと認識し、モスクの形態を維持し、それを活かしてキリスト教の空間作りをしたという点は、神仏混淆をした日本などとも通じる寛容性かとも思われる。キリスト教もイスラム教も一神教であるが、そういう点はプラクティカルで私には好感が持てた。この空間にいると、今、中東で起きている宗教対立、またはトランプが主張しているムスリム教はアメリカから出てけ!といった発言がいかに偏狭なものであるかが理解できる気がする。

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(中庭とバックにはアミナール)

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(ライトアップされたアミナール)

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(最も古いパート。コンクリートとレンガを交互に置くことで、空間に特別な味わいをもたらしている)

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(最も古いパートは屋根も木でつくられており、キリスト教の教会堂と比べると質素で落ち着いた雰囲気)

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(教会堂の屋根は随分と派手で仰々しい)

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(新しいパートは、レンガ部分もペンキで塗られていたりして、神聖なる空間をつくろうとする意気がそれほど感じられなくなる)
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