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セブン・イレブンおでん部会 [書評]

 この本は読んでいるとイライラしてくる。まず、タイトルは「セブン・イレブンおでん部会」であるが、おでんの話は9章中、1章だけであった。看板に偽りありだ。基本、この本は、セブン・イレブンがいかに加工食品の商品開発に力を入れているか、ということを手放しで絶賛している。絶賛のオンパレードである。確かにセブン・イレブンはその商品をよくするために一生懸命、努力をしていることは本書からもよく伝わってくる。その企業体としての姿勢は素場らしいものがあるなとも感じる。
 しかし、セブン・イレブンというコンビニエンス・ストアが、そこまで加工食品の商品開発に力を入れる必然性が社会にあるのか、というか、コンビニエンス・ストアに美味しいおにぎり、おでん、パンなどを期待するという社会は圧倒的に非効率で食文化的には貧困な社会なのではないか、という思いを、本書を読めば読むほど、強く抱いてしまうのである。あまり強く思ってしまったので、最後まで読み通すのが苦痛であったぐらいである。
 おでんは、おでん屋がつくればいいのである。美味しいメロンパンはパン屋がつくればいいのである。美味しい蕎麦を食べたければ美味しい蕎麦屋に行けばいいのである。コンビニエンス・ストアが我々の消費生活を豊かにしているのは異論がない。私もよく使う。しかし、おでんもメロンパンも蕎麦もおにぎりも買わない。いや、絶望的にお腹が減った時は、おにぎりは買う時があるのと、登山をする時にもおにぎりを買ったりはする。しかし、それ以外は買わない。
 なぜなら、おでんはおでん屋の方が遙かに美味しいし、家でつくったものの方が美味しいし、蕎麦も遙かに蕎麦屋、もしくは家で茹でた方がはるかに美味しいからである。サンドイッチもそうである。私が家でさささっとつくったサンドイッチは、セブン・イレブンのサンドイッチよりはるかに美味しい。なぜ、冷やし中華を家でつくらないで、コンビニで買うのだろう。いや、外食で食べるから、という人がいるかもしれないが、そこらへんの中華料理屋で食べた方が絶対に美味しい。それは、料理を提供するという形態(注文してつくるのと、既製品としてつくられたもの)の圧倒的な越えられない差である。
 私はたまに他の郊外とかにある大学とかの会議や打ち合わせで、コンビニ弁当を食べざるを得ない時があるが、その時ほど食欲がなくなる時は滅多にない。そして、100%不味い。美味しいコンビニ弁当を食べたことは、サンプルは少ないが、一度もない。崎陽軒のしゅうまい弁当の方が遙かに美味しいと思う。
 まあ、他人がコンビニで何を買おうが構わないが、本書を読んで私が強く思ったのは、コンビニエンス・ストアが我々の消費生活を豊かにしようとすればするほど、我々の少なくとも食事のレベルは悪くなっているということである。
 最後にこの本は鈴木敏文会長と取材をしているが、この部分だけは読む価値がある。
最後まで苦痛をこらえて読んだことが、ちょっと報われた気分になった。 

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