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メキシコ・シティのBRTシステム [都市デザイン]

 メキシコ・シティを12年ぶりに訪れる。12年前のメキシコ・シティも非常にいい印象を抱いたが、今回はさらにいろいろな面で都市がグレードアップされていることを知った。特に随分とよくなったな、と思われるのが公共交通、その中でもバスであった。ということは、以前はバスに乗ろうという気にはまったくならなかったが、今ではクリチバのようなバス専用道路を走るメトロバスが整備されている。バスのルートがしっかりと認識できるので、その都市に不案内のものでも利用しやすい。その結果、地下鉄よりずっと使うようになっている。前回は地下鉄だけで都市探検をしていた。
 どうも2005年に開業したそうだ。私が訪れたのが2004年なので、ぎりぎり間に合わなかったかということか。しかし、そのおかげでビフォア・アフターが印象論ではあるが比較することができる。
 バスのいいところは、街中をみながら移動できることである。そのため、街がどうなっているかが分かる。例えば、サカロの西側は電気街で東側は繊維街であることなどを知ることができるのである。そして、頻度が高い。バスは相当、混んでいて、日本の地下鉄のラッシュアワーを知っている私でも躊躇するぐらいの混み具合である。ただ、頻繁に来るので、2本ぐらい待つと比較的、空いたバスがやってくる。この専用道路を走るバスは車両が大きく、その収容人数が多い。これも嬉しい。
 路線は全部で6本。バス停留所は208。2013年の利用者数は90万人に及ぶそうである。バスの専用道路を整備したことと、車両の改善によって走行速度が向上したことで、所要時間は平均して50%も短縮されたそうである。また、チケットはパスモのようなプリカード。主要停留所ではクリチバのようにプラットフォームに入る前に改札を通る。これだと、停留所での短縮時間が大幅に向上する。実際、扉は客が待っていてもすぐ閉まる。これは日本のバスに乗り慣れている自分からすると驚くが、定時性を維持するためには、そういう判断も必要かなと思ったりする。東京でバスを待っている時、料金を支払うのに時間がかかっている客がいるといらいらする自分がいるからである。
 感心したのは料金の安さ。空港行きだけが30ペソ(160円)だが、それ以外は6ペソ(32円ぐらい)。画期的な安さである。実際、メキシコ・シティは物価が安いのだが、それに比べても低く料金設定されている。これはクリチバのバス・システムが3ヘアイス以上(100円以上)請求しているのとは対照的である。
 ただし、開業してからしばらく経つが、人々がこのバス専用道路をあまりリスペクトしていないことは気になった。そもそも信号無視をするカルチャーがあるが、バスが走っていても平気で道路を横切る。専用道路のバスの前を競争するように自転車で走る若者や、バス専用道路の縁石に座り込む人達が多い。なぜか、バス専用道路が駐車場の出口になっていて、そこからはしょうがないが、自動車が出てきてバスの運行を妨げる。クリチバは、このバス専用道路はバスのものである、ということを啓蒙することに非常にエネルギーを注いだ。メキシコ・シティは、この点についてはまだまだ改善の余地があるとの印象を受けた。
 ケビン・リンチは優れた都市構造の5条件の一つにアクセスを挙げているがメキシコ・シティはこの12年間で確実にアクセスを改善させている。公共空間のデザインも随分と向上されているし、世界第二の都市は随分と上り調子にあるような印象を受けた。

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(バスを挑発するように、バス専用道路を走る自転車)

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(バス専用道路の整備と車両改善で、従来よりも所要時間を50%も削減することに成功した)
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