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旭川の買物公園を訪れ、そのファサード・デザインの不味さに気づく [都市デザイン]

 旭川の買物公園は日本では珍しい人々に使われている公共空間である。道路から自動車を排除し、歩行者専用空間とした道路である。個人的には、そもそものコンセプトも大変好きであったが、1998年にリニューアルをしてさらに空間的には優れて人間に優しいものとなった。
 さて、この買物公園に関してヒアリングを市役所と、この公園(道路)のソフト面での維持管理をしている旭川平和通商店街振興組合さんとにお話をうかがった。私のような専門的立場からすると優れた公共空間ではあるが、実際、旭川市民がそれをどう思っているかが気になったからだ。
 買物公園では、毎年、通行人調査を実施している。そこから分かったことは、ここ数年、通行人は減っていたのだが、去年にイオンモールが平和通りの基点でもある旭川駅前に出来てから、4条の南側の通行人は増えるようになったそうだ。ただ、北側に行くほど通行人が減り、寂しくなるという傾向はさらに強まっているそうだ。
 この買物公園の課題はどのような点があるのか。旭川平和通商店街振興組合の方が非常に鋭い指摘をした。それは、店舗のファサード・デザインが優れていないということだ。せっかく歩行者にとって素場らしく快適な公共空間がつくられているにも関わらず、歩行者が楽しむようなファサード空間がつくられていない。これは、海外の類似の歩行者専用モールなどとは違う、との意見をいただいた。
 早速、その指摘を検証するために買物公園を歩くと、まさにその通りで、ファサードのデザインが歩行者にとって楽しむようなものになっていない。商業空間の楽しさを図る一つの指標としてトランスペアレンシー(transparency)というものがある。これは、道路から建物の内部がどの程度見られるかという指標であり、通常、窓によって建物の内部が見られる(ウィンドーショッピングができる)度合いで評価される。つまり、道路を歩いている楽しみをどの程度、建物側が提供してくれるか、ということなのだが、これが買物公園は劣っているのだ。多くの商店は、ほとんど建物が看板 のようなファサード・デザインとなっており、窓のように建物の中身が見られる部分が少ない。トランスペアレンシーがここまで劣っている、というのは確かに指摘される通りである。しかし、私は買物公園を訪れるのは3度目であるが、それまで気づかなかった。それは、どうしてかというと、公共空間の部分が優れていて、そちらにばかり目がいってしまったからである。
 買物公園の公共空間としての都市デザインは非常に優れていると思われる。ベンチの配置、街路樹、ストリート・ファーニチャー、舗装の素材、どれをもっても極めて考えられていて優れている。そして、私はそちらにばかり目が向いてしまい、商店のファサード・デザインを気にしていなかった。それは、日本の都市はたいていの場合、公共空間のデザインが劣っていることが問題であったからである。それに比して、日本の商店街は歩行者空間を楽しくすることに対しての工夫においては優れている。自由ヶ丘の九品仏緑道は、ほとんど建物がガラス窓でトランスペアレンシーがとてもいい。しかも、それらの建物の二階は九品仏緑道の樹木が映えてとても美しい(http://www.hilife.or.jp/cities/?p=979)。別に窓によるトランスペアレンシーが優れてなくても、エアフルトのクレーマー橋のように窓がないで店の奥までみえることでトランスペアレンシーを演出しているところもある。少なくとも、看板といったポスター的な情報ではなく、視覚的に商品や店内を見せることで歩行者の興味、関心を惹く工夫をしている商店街はたくさんある。そのような事例ですぐ思いつくのは、パリのヴィヴィアンヌ・ギャラリーやアメリカはボルダーのパール・ストリート(http://www.hilife.or.jp/cities/?p=214)、バーリントンのチャーチストリート・マーケットプレイス(http://www.hilife.or.jp/cities/?p=813)、サンタモニカのサード・ストリート・プロムナード(http://www.hilife.or.jp/cities/?p=799)などである。
 そのように考えると、買物公園は公共空間としては優れていても、商店街としてはまだまだ改善の余地があるということだ。というよりかは、こんな素場らしい公共空間に面して立地しているなら、もっとうまくそのポテンシャルを活かせばいいのにと思う。というか、多くがチェーン店なので、そのような工夫をする裁量を有している店が少ないのかもしれないが、結果的に公共空間側も店側も損をしていると思われる。もったいない話である。

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(まったく凡庸な買物公園のファサード)

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(地域性がないファサード・デザイン。チェーン店だからしょうがないですが)

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(せっかく優れたベンチに座っても、その前の店舗の光景がこれじゃあ、目を楽しむことはできない)

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(こんな看板で人を惹きつけようとするのは、これだけの通行量の多い歩行者専用空間においては間違っている)

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(トランスペアレンシー(透過度)がほとんどゼロのファサード)

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(間口が狭くても、ちらしを窓に貼ったら店内が見えずにとても残念)

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(ヴィヴィアンヌ・ギャラリー)

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(ヴィヴィアンヌ・ギャラリー)

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(パール・ストリート)

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(ノードシュトラッセ、デュッセルドルフ)

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(チャーチストリート・マーケットプレイス)

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(ノーウィッチ)

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(ヴェネツィア)

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(クレーマー橋、エアフルト)

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(自由ヶ丘、九品仏緑道)
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