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縮小都市の研究の傾向について [サステイナブルな問題]

 日本では縮小化が進展している。そこで、縮小都市の他国の事例やその対策などが研究されている。その流れとしては大きく3つに分けられると思われる。1つはアメリカの工業都市、ピッツバーグやヤングスタウン、デトロイトなどの縮小都市の対策に関する研究グループである。政策的にはランドバンクといった空き家をどうするか、という方法論を研究しているケースが多いと思われる。みずほ総研の藤井さんや神戸大学の福岡先生などの流れである。まだ、しっかりと本にまとまったような研究成果はなく、学会の論文でぼつぼつと研究蓄積が積まれつつあるといった印象だ。コンパクトシティの海道先生なども関心をお持ちのようである。
 もう1つは単発の事例研究で、ドイツのライネフェルデ研究やイタリアのトリノ研究が挙げられる。前者は、元明治大学の澤田先生が中核で、後者は龍谷大学の矢作先生が実施されている。ライネフェルデは計画がしっかりしているドイツの中でも異例中の異例の成功例であり、あまり一般性はないが、ストーリーとしては面白い。私が研究しているクリチバのような特異解である。トリノは、都市ジャーナリストとして傑出している矢作先生が注目したことで新書や単行本で紹介されることになり、私を含めて多くの日本人が知ることになったが、例えばマンチャスターやライプツィヒより興味深い事例とは個人的には思えない。矢作さんが研究対象にしたことで、比較的日本では知られることになった事例ではないかと思ったりする。
 そして、3つめのトレンドは旧東ドイツの縮小都市プログラムであるシュタットウンバウ・オスト関連の研究者達であり、自分で言うのは憚れるが私を含めたグループである。東大の岡部先生やその研究室のお弟子さんやコンパクトシティの海道先生などが含まれる。私はこれに関しては学術書を出版したことなどもあり、多少、先行しているのではないかと勝手に考えていたりしている(まだまだ研究不足が甚だしいですが)。
 この3つのトレンドのうち、どれが日本にとって役に立つのか。思想的にはドイツの政策から学ぶべきものが多いと思われる。ただし、政策的にはドイツは極めて民主主義的でしっかりと都市政策を遂行できるが、日本はその点が非常に難しいところがあるのでアメリカのような市場原理至上主義のアプローチの方がしっくりくるかもしれない。ただ、コミュニティの力というかボトムアップのポテンシャルの高さを意識するのであれば、ドイツの事例から学ぶべきことが多いかと思われる。
 どちらにしろ、これから縮小というのは日本にとっては大きな社会的課題となる。アベノミクスの基盤を揺るがす大きな構造変革であり、これまでと経済のルールも変更させられることを強いられる。移民を増やすことをしなければ、確実に訪れる未来であり、そのしっかりとした研究を積み上げることが必要だ。拙著も少しは参考になるかもしれない。
 

ドイツ・縮小時代の都市デザイン

ドイツ・縮小時代の都市デザイン

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2016/04/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



タグ:縮小都市
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