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郡上市の石徹白を訪れる [サステイナブルな問題]

 岐阜県の郡上市を訪れ、石徹白まで足を伸ばす。郡上八幡から車で1時間ほどのところである。岐阜県と福井県の県境にあり、ちょっと前までは福井県に属していた。人口は1200人から270人と大幅に縮小した。
 石徹白にIターンで来られた、平野さんという東京大学の修士号を取得され、外資系コンサルや商業開発デザイン事務所などで活躍された超エリートの方にお話を聞かせてもらった。
 白山信仰の集落であり、2700ある白山神社の頂点の一つである。集落は、夏は宿坊、冬は宣教師のようにお札を配っていたりした。信仰を基軸にしていたこともあり、外から来る人達によって維持されてきたという経緯もあり、他者を受け入れやすいという土壌がある。
 2007年に地域づくり協議会というNPOが設置される。平野さんは水力発電をここでやりたいと考え、ここに相談して受け入れてもらった。
 石徹白というと水力発電だろう、と勝手に思っていたが、どうも地元ではそれほど水力発電には関心はなかったらしい。
 2009年に平野さんは協議会の事務局をやることになり、公式HPやカフェの立ち上げの手伝いをされた。
 そして水車を復活させる。この水車によってメディアに載るようになり、移住者も徐々に増えていくことになる。8年間で13世帯、32人が移住してきた。集落の約1割が移住世帯である。移住者は、最初はIターンが多かったが、最近ではUターンも増えている。
 キーワードとしては自治。全戸出資で農協をつくり直し、そして発電所を完成させた。総費用は2億4千万円。しかし、補助金があったので6000万円は出費した。これを100世帯で分担している。地元の人達が何しろ凄い。
 それまでも農業用水の水路に段差があったところで発電をしていた。大正13年に発電所を200世帯でつくったという歴史がある。集落全体に電線までも強いている。昭和30年頃までは、この集落は自分のことは自分でしていたのである。それぐらいの意志決定をこの集落では行うことができたのである。
「皆で一緒に何かやろう、というのがなくなると人口は減っていく」と平野さんは言う。仕事をつくるとか、公的なことをする、とか昔はもっとやっていた。「こういうことをしなくなると、衰退は進んでいく」という平野さんの言葉はとても重く、本質を突いている。
 皆で、何かやろうというので発電所をつくることにした。17人の発起人がいた。これは自治会が中心である。自治会は最高意志決定機関である。大きな事業は自治会で決まっていく。
 もう一つのキーワードは子育てである。田舎暮らしをしたい人には、ここ石徹白より、もっと便利なところに移住することを進めている。ここには仕事がないので、新しく仕事をつくりたい人でないと難しい。地元の人も外の人も仕事をつくっていこうとしているのが石徹白のポイントである。そして、外の人と地元の人を繋ぐのは子供の力である。卒業式は地元の人達がやってきて祝ってくれる。地元のおじいちゃん、おばあちゃんに可愛がられて、子供はここで育っていくのである。
 インターンで若者がやってくるが、彼ら・彼女らは、集落の人達が皆、ライフストーリーを語れる、ということに驚くそうだ。しかも、そのストーリーは多種多様であるそうだ。
 とはいえ、課題は山積みである。まず、山をどうするか。その維持管理費をどうやって捻出するか。高齢者の買い物支援なども問題である。
 しかし、自立的にやっている街、コミュニティは強い。人は履歴書を少しでも格好よいものにしようとして頑張ったり(はい、私です)、退職金の額を気にしたりした時に堕落し、しっかりと生きていけなくなる。そのようなことを気にもしない人達が結束すれば、どうにかなるということを石徹白の話を聞いていて改めて思わされた。

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(ただ、地面に乗っけただけの木造の建物)

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(その内側)

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(カフェにてお話を聞く)

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