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ウォリアーズはなぜ最弱から最強へと変貌できたのか? [スポーツ]

 ウォリアーズが絶好調である。開幕16連勝した後も無難に2勝した。全然、負ける気配がしない。15年ほど前の2000年には一年で17勝しかできなかったことを考えると隔世の感がする。いや、5年前の2009年のシーズンでさえ29勝しかできていない。しかし、なぜ、ここまで最弱から最強へと変貌することができたのであろうか。
 1993年のプレイオフでの一回戦負けの後、チームを買収したコーハンがオーナーをしていた頃は、やることなすこと皆、裏目。ドラフトで選択する選手は、リチャードソン(5位)とアリーナ(30位)、エリス(40位)を除けばほとんどが外れ。ヴィンス・カーターをドラフトして、すぐトレードなどという馬鹿なこともしたりした(このトレードで獲得したジェイミソンは悪くはなかったが、彼がオールスターになったのはウォリアーズを出た後であった)。特に95年のドラフト1位のジョー・スミスは酷かった。そして、トレードもほとんど全てが失敗。というか、ウォリアーズに来る選手は皆、駄目になって、出た選手は皆、成功するという、まさにウォリアーズそのものに問題があるような状況にあった。コーチでさえそうである。ウォリアーズが呪われているのではないかとさえ、私は訝しがった。もうファンとしては発狂するような出鱈目さ加減であった。
 このような状況を変えるきっかけは、2009年にウォリアーズの数少ない90年代のスター選手であり、バルセロナの元祖ドリームチームのメンバーでもあったクリス・ムリンをジェネラル・マネージャーから解雇したことに始まる。ムリンの代わりにGMとなったラリー・ライリーは、ドラフト7位でステッフン・カリーを選択する。ミネソタは、カリーの前に2つも選択権があったがパスをする(リッキー・ルビオと既にNBAを引退したジョニー・フリンを選択する)。さらにメンフィス・グリズリーはドラフト2位で、現在はデベロップメント・リーグに所属するタンザニア生まれのハシーム・サビートを選択する。今思えば、両チームとも痛恨のミスであるが、それまではウォリアーズこそがそういうミスをする常習であった。最弱から最強への変貌は、幾つかの要因が重なったものではあるが、この将来のMVP選手と成るカリーの選択が最も、大きな変換点となったことは間違いないであろう。
 そして、個人的に最も大きな変化、というか、この変化がなければ現在のウォリアーズはあり得なかったのが、長年、ウォリアーズのオーナーをしていたクリス・コーハンがチームを手放したことである。2010年のことである。コーハンはプレイオフ進出チームであったウォリアーズを買収した後、17年間で一度しかプレイオフに進出できないチームへと貶めた最大の戦犯である。本当、オーナーによってチームはよくもなれば悪くもなる、という典型的な事例であると思われる。
 新しいオーナーであるジョー・ラコブスとピーター・グーバーの一年目は36勝46敗というパッとしたものではなかったが、シーズンが終わった後、マーク・ジャクソンを新しいコーチとして任命し、ドラフトでは11番目で、その後、オールスター選手となるクレイ・トンプソンを選択するという幸運に恵まれる。
 次の年もプレイオフには出られなかったが、それまでウォリアーズの顔であった「ミシシッピー・ミサイル」のあだ名を持つ得点マシンである(が守備はぼろぼろの)モンテ・エリスをトレードに出して、代わりに元ドラフト1位のアンドリュー・ボーグを得る。これまでトレードで失敗ばかりしていたウォリアーズであるが、これは大ヒットとなる(ただ、当時はファンは大きく失望した。私はエリスとカリーは共存が難しいので、比較的歓迎したが、当時のカリーは怪我ばかりで、今のように飛躍するとは想像できなかった)。パス・センスに溢れるセンターという得難い人材であるのに加えて、バスケット下をしっかりとアンカーのように守るボーグを獲得したことで、それまで攻撃はまあまあでも守備はザルというウォリアーズの伝統を覆し、守備がしっかりとしたチームへと変貌することになる。これはジャクソンの戦略であったが、現在にも続く、勝てるチームへの大きな変身をボーグの存在によって成し遂げることになる。ただし、ボーグはトレードされた年には怪我で一試合も出ていないので、そのインパクトを知るのはそれ以降になる。
 そして、翌年、新しくボブ・マイヤーをGMにすると、彼は、ウォリアーズをチャンピオンにするべく重要な3ピースをドラフトで獲得する。1巡でバーンズ、エジリ、そして2巡であるにも関わらず、現時点でトップ10選手とまで評価されているトリプル・ダブル・マシーンのドレイモンド・グリーンを獲得する。
 この3人が揃って、ウォリアーズは西地区6位の成績で、2006年以来のプレイオフに進出し、3位のナゲッツを破り、地区準決勝にまで行く。そして、この活躍で、これまでスター選手は見向きもしなかったウォリアーズを行き先として考えるようになった。そして、その年のトップ・フリーエイジェントの一人であるアンドレ・イグアダラがウォリアーズに来る。バーロン・デイビス以来の快挙であった。
 この年もウォリアーズはプレイオフに進出するが、クリッパーズの壁を越えられずに7戦までもつれるが敗退する。
 そして、昨年。昨年はトレードをしたのではなく、トレードをしなかったことが結果的に大正解をもたらす。昨年のオフシーズン、ウォリアーズはミネソタのオールスター常連選手であるケビン・ラブとトンプソンのトレード話を却下する。多くのマスコミはこれを大失敗であると批判したが、結果、これが大成功。トンプソンはその年のオールスターに選ばれ、キャバリアーズに行ったラブはミネソタのような活躍ができずにスランプに陥る。
 ウォリアーズはフランチャイズの最高勝ち数の67勝をし、7戦にまでもつれることが一度もなく、40年ぶりの優勝を飾る。そして、カリーはMVPに選定される。
 さらに、今年は昨年よりさらに強くなっている。怪我というリスクが常につきまとうNBAではあるが、現在の横綱のような戦いぶりは、つい最近まで勝率3割台(2011年、2009年、2008年)であったことが信じられない。
 オーナーのしっかりとした考え方、そして幾つかのドラフトとトレードの成功で、これだけの短期間でチームが変貌するという、素場らしい事例であると思われる。企業や組織、そして大学などもこのウォリアーズの変貌から学ぶことはとても多いのではないかと思う。

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