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ハンブルグ市民の過半数がオリンピックの立候補に住民投票で却下する [都市デザイン]

 2024年のオリンピック開催地に立候補することを決める住民投票で、ドイツの候補都市として選定されていたハンブルグ市の市民は51.6パーセントで却下した。2024年のオリンピックをハンブルグで開催させる委員会のリーダーであるニコラス・ヒル氏は「コンセプトはよかったが、人々を説得させることができなかった」と述べたとシュピーゲル紙は報告している。
http://www.spiegel.de/sport/sonst/olympia-referendum-hamburg-sagt-nein-a-1065147.html
 このブログでも何回か述べさせてもらっているが、オリンピックは目的ではなく政策的手段である。オリンピックとは難しい都市問題を解決させるための劇薬であり、手段として捉えることが政策的に正しい。バルセロナがそのまさにモデルであり、このバルセロナを模倣して同じく成功したのが前回のロンドンである。ちなみに、1964年の東京は見事に都市開発の梃子としてオリンピックを活用し、それを参考に同じように成功したのがソウル・オリンピックである。
 そういう意味では、ハンブルグはヨーロッパでも最大規模の再開発地区であるハーフェン・ハンブルグを擁している。さらに、ヴィルヘルムスヴァーグというハンブルグの最近の経済的好況から取り残された巨大な中州もある。これらをオリンピックの会場とすることで、ハンブルグの都市開発は大きく前進するであろうと思われる。つまり、オリンピックをする費用対効果が極めて大きな都市なのである。
 それにも関わらず、ハンブルグ市民はオリンピックを却下した。FIFAのスキャンダル、ロシアのドーピング問題、パリのテロ事件などが逆風となったのは確かだ。このトレンド下、ハンブルグ市民はオリンピックより違うことに税金を使った方がいいであろう、という判断をしたのである。
 私は2020年の東京オリンピックのように、それを都市計画的手段ではなく、目的として位置づけるのは愚行であると捉えているし、そのようなオリンピックはアテネのようにとんでもないマイナスの結果をその後にもたらす可能性が高いと考えている。しかし、オリンピック自体を反対している訳ではない。馬鹿とハサミではないが、オリンピックを見事に手段として活用すれば、それは大きな効果をもたらすことができるし、それを下手に使えば、その都市の財政に大きな打撃を与え、都市を迷走させることになる。
 そういう点では、ハンブルグはオリンピックを手段として活用する開発候補地を多く有しているし、そもそもハンブルグは都市計画偏差値の極めて高い自治体である(ハーフェン・ハンブルグをみれば明らかである)。したがって、オリンピックをする都市としては、そうとう適していると思われるのだが、住民は却下した。これは、オリンピックを開催するメリットが相当ある都市にとっても、そのデメリットがより大きいと捉えられるようになったということで、オリンピックがもたらす楽観的ユーフォリアが、少なくともドイツにおいては相当、後退していることが伺える。
 このような判断をしたハンブルグに比して、高齢化一直線で、開発候補地もほとんどなく、都市計画的もアテネ並みの戦略性のない中、オリンピックが開催される東京。大阪や福岡のようにオリンピックをしっかりと都市開発の手段として活用できる種地もなければ、アイデアもない。行き当たりばったりで進めようとしたために、ザハ・ハディドのような人類の宝のような天才建築家の作品をつくれないどころか、あと4年しかないのに代替案が未だない。
 ハンブルグではなく、東京こそがオリンピックを却下すべき都市であった。

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