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宮崎市は、日本のフィニックスのような都市じゃないか(毒ガス度高し) [都市デザイン]

 宮崎市を再訪する。学会が開催されており、私も発表をしなくてはいけなかったからである。宮崎市は15年くらいほど前に訪れたことがある。長崎市や熊本市、鹿児島市のようなアイデンティティが感じられず、なんか印象が薄い都市であった。椰子の木が植えられている大通りがあるのだが、ロスアンジェルスなどの南カリフォルニアやサウス・カロライナのチャールストンではしっくりとくる椰子の木が、宮崎市ではどこか違和感を感じさせたことを覚えている。
 さて、そのような印象を私が受けた理由が今回の再訪で分かった。まず、宮崎市はそもそも歴史が浅い。その昔、現在の宮崎県で中心的な場所は美々津(現在の日向市)と都城であった。1871年の廃藩置県では、美々津県と都城県が設置された。その県境が大淀川で、宮崎市があった場所は寒村であった。しかし、1873年に美々津県と都城県が合併することになり、地理的真ん中の宮崎に県庁が置かれることになった。しかし、1876年に宮崎県は鹿児島県に合併される。西南戦争の敗戦によって混乱し、1883年の分県運動によって再び宮崎県が再置されると、その後、行政都市として発展していくことになる。1950年に人口が15万人を超え、1969年にようやく20万人を超え、1995年にようやく30万人を超える。
 ということを考えると、本当、150年の歴史もない新興都市であることが分かる。そのような歴史の浅い都市であったので、都市計画的に格子状の区画割りがされたり、日本では珍しく、大通りが配置されていたりする。その詳しい都市計画的発展は、ちょっと現在、手元に資料がないので何ともいえないが、なかなか面白いのではないかと好奇心がそそられる。私は都市計画をほとんどアメリカで勉強したのだが、アメリカの諸都市よりも歴史が浅く、ほとんどフィニックスとかソルトレーク・シティとかロスアンジェルスのような都市と同じ文脈で捉えることができるのではないかと思うのである。
 実際、40万を超える人口があるにも関わらず、鉄軌道の公共交通がない。高知、福井、弘前、函館、高松、松江といった宮崎より人口規模が少ない都市がそのような社会インフラを有しているのと比べると、極めて自動車型の都市であると思われる。この点もフィニックスなどと似ている。
 宮崎市の都市づくりはほとんど表層的である。椰子の木の並木道の橘通もそうだが、そもそも、なぜ椰子の木なのだろうか。沖縄、小笠原以外の日本国内で自生する椰子は、ビロウ、シュロぐらいである。宮崎の橘通に植えられている椰子はアメリカのロスアンジェルスのビバリーヒルズなどの並木道に植えられているものと同じワシントニアパームである。アメリカ南西部からメキシコ北部に自生する木である。ビバリーヒルズに似合うのはそれが自生種であるからだ。イメージ戦略としては悪くないかもしれないが、多くの日本人が海外に観光している時代においては、この嘘っぽさが逆に惨めさを誘う。

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(自生じゃない木で、オーセンティシティを出すのは相当、本気でやらないと無理でしょう)

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(椰子の木で景観づくりをしたいのであれば、ファサードまでコントロールする徹底さで臨まないと、ただ違和感だけが浮き立つだけである)

 そのようなメンタリティと通底していると思われる宮崎市の大規模開発がシーガイアである。シーガイアとは天下のアホ法である総合保養地域整備法(リゾート法)適用第一号であり、なぜか世界最大級の室内プールなどをはじめとして、国民の貴重な税金2000億円を浪費してつくり、開業した。その運営会社は宮崎県、宮崎市出資の第三セクターであった。
 リゾート施設という箱物をつくれば宮崎市にリゾート客がくる訳もなく、毎年200億円程度の赤字が発生。2001年に、第3セクターとして過去最大の負債3000億円以上を抱えて倒産した。2000億円でつくった施設は、162億円で外資に売却。その後、韓国・中国人が誤解して来てくれたこともあり、経営は改善され、2007年にオープン以来初の営業黒字になったりしたが、まあ、ピーター・ホールが知ったら「プラニング・ディザスター」に追記したくなるような計画の大失敗事例である。
 都心からは地理的に近いが、公共交通でのアクセスが悪く、実質的には自動車でしか来られない。海外旅行が出来ないといった制約があれば、来る人もいたかもしれないが、そうでなければ、こんなちんけなリゾート施設に来るのは、飛行機に乗りたくない人達と、まだ誤解をしてくれる韓国・中国人客ぐらいであろう。しかし、市場がばかでかい中国はともかく、台湾、韓国の人達はそのうち来なくなるのではないだろうか。彼らも決して馬鹿ではない。
 まあ、こういう失敗が平気で出来るのは、その土地の持つ価値、その土地の歴史などのアイデンティティで勝負しようという意識さえなかったからだ。いや、そのようなアイデンティティがないので、それこそワイキキ・ビーチやロスアンジェルス、マイアミのような都市やリゾート地のストーリーをつくることが必要であったのだが、ストーリーのつくりかたがちょっと下手すぎでしょう。この下手さが、宮崎という都市に対しての私の嫌悪感を増長させているように思うのだ。要するに、下手な結婚詐欺師のようなものだ。どうせ詐欺であるのなら、騙されている時ぐらいは気持ちよく、浮ついた気分にさせてもらいたい。

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何でリゾートなのに、こんな高層ビルを建てなくてはならないのだろうか。高松市の再開発ビルもそうだが、海岸沿いにぽつねんと立つ高層ビルほど、周辺から浮いているものはないよね。ゴールド・コーストやマイアミ・ビーチのように林立させられればまだそれなりの雰囲気にはなりますが。

 そして、アイデンティティもないので、イオンなどはもちろんウェルカムであり(実際はもめるが、結局、市長はOKする。揉めたと演出する市長の政治的演技との話もある)、イオン宮崎ショッピングセンターは九州最大級(最大ではなく二番目である。しかし、宮崎市は都市規模では九州七番目)である。ただ、中心市街地も他の都市のような老舗がある訳ではないので、保全する価値は都市構造的に移動エネルギーを減じるとか、起業のチャンスを確保するとか、それぐらいのメリットしかないかもしれない。中心市街地にある60年の歴史を誇るチキン南蛮のお店でお昼を食べたが、チキンは固く、私は珍しく美味しくないことが理由で残した。朝食を抜いたにも関わらず、である。こういう店が60年も暖簾を守れるということは、なんか、中心市街地もぬるい状況にあるのかもしれない。

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(九州では二番目の規模をもつイオン。まあ宮崎市という都市自体がイオンとの親和性が高いような印象を受ける)

 ただし、ほとんど表層的とは書いたが、県庁通りの並木道はよくつくられている。こういう本気さを、このスポットだけでなく、もっと面的に広げるようにしたら、100年後といわず、50年後には結構、いい都市になっているのではないだろうか。

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(この並木道はよく丁寧につくられていて感心する)

 このように考えると、宮崎市は、日本のフィニックスのような都市じゃないか、と思ったりする。その歴史の浅さ、アイデンティティの無さ、都心の魅力のなさ、そして自動車優先型のまちづくりを推進してきている、という点も共通している。そして、圧倒的に消費者文化を体現した都市であるという点でも共通している。そういえばフィニックスは大リーグの春季キャンプ地でもあり、その点でも宮崎と共通している。都市計画に関係するものとしては、フィニックスを訪れると、馬鹿にされたかのような気分にさせられるのだが、宮崎市もそのような都市である(県庁通りを除くと)。

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