SSブログ

安保法案が通ったことで、これで日本も米国の属国に相当近づいた [グローバルな問題]

安保法案(安全保障関連法案)が可決した。私はその強行採決のあまりの酷さ、醜悪さには強い嫌悪感を抱く(下記のウェブサイトを参照)し、この法案には反対である。

http://www.dailymotion.com/video/x375y4c

しかし、例えばSEALDsが主張するように「他国に行って他国を守るために戦争をする」ことを回避させるという観点からというよりか、この法案を通すことで、アメリカに対しての貴重な抵抗カードを失ってしまうという観点から、より反対というか強い危機意識を抱いている。

この法案を通しても、自分の都合で戦争はすることは容易ではない。ただ、アメリカ軍が戦略を展開した時に、日本はこの法案を通したことでより協力しやすくなる。いや、より協力することを拒否できなくなる。なぜ、動画のような醜悪な事態を晒してまで強行採決に急いだのか。それは、アメリカ議会で「夏までに」と安倍さんが大見得を切った手前だ。要するに、今回の法案はアメリカのために通したのであって、日本人のことを考えた訳では決してない。

私は、安倍さんほど「売国奴」であった首相は戦後、初めてではないかと思ったりもする。いや「売国奴」といったら安倍さんは怒るかもしれない。というのは、彼が「日本を取り戻す」といった時の主語は、安倍さんであって、まったくもって日本国民ではないからである。私が言う売国奴の国には、日本人が含まれている。アメリカから日本人の命を守っていた楯を使えなくした、という点から私は売国奴といっているが、安倍さんにとっては日本人の命なんて、自分の家族と仲間以外はまったく意味のないものなのであろう。

ただし、よくよく考えなくてはいけないのは、この法案は諸刃の剣であるということだ。というのは、一方で極めて売国奴的な、まさに日本をアメリカに売るような法案であると同時に、そのまったく逆な立場、すなわち極めて愛国的で右翼的な人達には、アメリカからむしろ独立するのに使えるような法案にも見えるからである。日本という国の独立性を極めて損なうことを促す法案であるにも関わらず、それとはまったく異なる独立性を高める法案としての期待も受けている。

ここがこの法案をどのように解釈すべきかが難しいところとなっている。気になるのは、アメリカのマスコミはこの法案に対しては好意的で、あまり批判していないことである。Associated Pressの記事は次のように紹介している。

Japan's military can now defend its allies even when the country isn't under attack - for the first time since the end of the World War II - and work more closely with the U.S. and other nations. Japan will also be able to participate more fully in international peacekeeping, compared to its previous, mostly humanitarian, missions.

注目すべきところは「Work more closely with the U.S.」で、「アメリカとより協働して活動することができる」と基本的にアメリカにとってはプラスであると紹介していることである。より、パートナーとして一体化することを、この法案は「強制」する力を有しているのである。

アメリカというのは、相当やばい国である。特に資本主義が成熟化し、その行く末が混迷化している中、アメリカ自体が人を幸せにすることが困難になっている。そして、その困難を戦争によって、他国から富などを奪うことで、どうにか維持させようと目論んでいるろくでもない国だ。しかも、そのようなろくでもないことをしている癖に、アメリカ人でさえ幸せになれていない。そのような国とは、ある程度、距離を置いて付き合うことこそ正しいし、アメリカの軍事戦略に荷担できない、大変都合のいい言い訳としての憲法9条があったのである。それにも関わらず、その憲法9条を形骸化させるような、このほとんど憲法違反の安保法案を通すということは、安倍さんを始めとして、自民党議員の多くが、日本人のことをまったく守ろうとはしていない人達であることがよく分かる。まあ、西田昌司参議委員議員などは、「そもそも国民に主権があることがおかしい」と述べるくらいだから(http://togetter.com/li/419069)、随分と馬鹿正直に本音を述べている。

この法案を通すことで、日本をある程度、武力国家とさせることで、これまでのアメリカからの軍事的干渉に対しても抵抗できるような、大東亜帝国の再来を夢見ている人は、あまりにもアメリカをなめている(いや、こういうなめている人達が戦前の対米戦争を引き起こしたのでしょうが)としか言いようがない。

この国はあまりにも強大で、とても喧嘩をする相手ではないのだから、せめて喧嘩に一緒にいけない言い訳としての憲法は守るべきだったと思うのだが、まあ、この安保法案を通したことで、その言い訳はもう通用しなくなってしまっただろうな、と思うのである。

つまり、この安保法案に賛成していた右翼系の議員の思い通りには、事は進まないだろうと私は推測している。そのように事は進まないにも関わらず、つまり日本国としての独立性を確保したいがために通したにも関わらず、結果として、より独立性を失うことになると私は推察するのである。これは、何ともいえない皮肉である。

日本がより米国の属国に近づいた歴史的な分岐点になってしまうような日として、9月19日は記憶されるであろう。

残念だが、そのような経緯で成立した安保法案を今後、廃案にするのはアメリカの圧力のもとで、まず不可能である。アメリカはこれをきっかけに、どんどん日本を属国化する戦略を展開していくであろう。沖縄は日本の領土であると多くの人が思っているかもしれないが、今後、ほとんど政治的にはアメリカの領土になるだろう。

まあ、日本は本来的には太平洋戦争で、ほとんど国としては滅ぼされたも同然であった。しかし、何かアメリカは計算間違いをして、日本を平和国家として再生させるというシナリオを描いてくれた。この平和国家というのは、アメリカとしては相当、都合が悪いことになるのだが、対ソ連という構図もあったので、いい格好をしたかったんだろうね。この平和国家は、政府という暴力、そしてアメリカという暴君とから我々、国民を守ってくれることになった。それを、「国民が主権を持っていることがおかしい」という人達が、国民から奪った、というのが実態だろう。

どちらの立場にしろ、安保法案の可決が、我々国民にとってプラスになることは何一つない。しかし、「国民が主権を持っていることがおかしい」という政治家に票を入れる国民は、そのような報いを受けても然るべきであろう。ただ、悔しいのは、この安保法案に賛成している人達は同床異夢であることだ。戦争ができる国を目指したのはいいが、その戦争は、多くの右翼が夢見ていた自国の権益を拡充させることを目的とした戦争ではなく、アメリカのポチとしての戦争になることがほとんどであろう。まあ、アメリカにもいつか、牙を向けてやると思っているのかもしれないが、それは再び、この国を焦土と化す結果をもたらすだけではないだろうか。

前回の選挙で、自民党に政権を託した人々は、こういうことを本当に望んでいたのだろうか?

私は今回の法案を可決したことは、右翼の人達が思っているのとは異なり、日本が大きく失われた日になってしまったと思うのである。よりアメリカに近づいた日である。それは、大変、悲しいことである。

ちなみに私はアメリカで7年間暮らしているし、長女は意図的にアメリカ国籍を持てるようにした。ただ、そのような私でも、日本がアメリカ化することにはとても強い抵抗と悲しみを覚えてしまうのである。多くの日本人はアメリカという国の怖さをあまりにも過小評価しているのではないだろうか。
タグ:安保法案
nice!(2) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2