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長良川鉄道に乗る [地域興し]

 長良川鉄道で郡上八幡から美濃太田まで行く。約1時間20分。列車は長良川沿いの渓谷を単線でゆっくりと走っていく。沿線の光景は素晴らしい。どこが素晴らしいかというと、その地域風土が感じられる街並み、自然景観が残っていること、特に長良川の水の流れが素場らしい。このような景観は山陰地方などにはまだ残っている印象を受けるが、北海道には皆無であるし、意外と東北地方にも少ない印象を受ける(津軽半島などは行ったことがないので、この点は間違っているかもしれない)。ここらへんは、地域としての豊かさの違いとも関係があるかもしれないが、郡上や丹波のように養蚕などで豊かな地域経済を謳歌し、かつ戦後の経済発展の周縁部に位置していた地域は、素場らしい風土を維持できているところが少なくないような気がする。
 長良川鉄道のペースはとてもゆっくりで急いでいる人にはじれったいところもあるかもしれない。しかし、並走する国道を走る車よりは速いスピードで走っていく。そのアンダンテぐらいのテンポは、この山間の風土にはちょうどよい。
 郡上八幡へは行きには高速バスで岐阜から行った。高速道路はトンネルも多く、ほとんど車窓を楽しめない。地域風土や街並みから分断され、全然、楽しめない。寝るには都合がいいかもしれないが、旅行の移動という楽しみがほとんどない。それに比べて、この長良川鉄道はディズニーランドのグレート・ウェスタン・レイルロードに乗っているような静かなわくわく感がある。険しい山間では、目の前に突然、小さい滝が見えたりする。毎日、通勤や通学で使っている人には退屈かもしれないが、初めて乗った私はちょっとした感動の景色が展開する。最近はドイツのローカル線ばかり乗っていて、日本のローカル線に乗る機会が少ないのだが、しっかりと日本にも素場らしいローカル線が走っていることを再確認して嬉しい限りである。
 長良川鉄道の経営もおそらく相当、厳しいと思われる。ただ、この鉄道があることで、美濃太田と繋がっている。そして美濃太田でJRに乗り換えれば、全国と繋がることができる。この安心感が地域に与える影響はとても強いものがあると思われるのだ。これは、道路が与える安心感とは別のものである。道路は移動するうえでは必要条件ではあるが、十分条件ではない。道路で移動するためには、自動車運転免許証が必要であるし、自動車が必要であるし、また運転技術をするために十分な身体的状況(眠くないなど)が求められる。それに対して、電車は小銭が少々あれば乗ることができる。駅に行かなくてはならないというハードルはあるが、駅まで行ければあとはどうにかなる。この安心感、さらに地域の顔として、シンボルとしての駅の果たす役割も大きいと思われる。北海道の足寄駅が、鉄道を廃線にした後も、その駅舎を町のランドマークとして利用していることなどは、鉄道は廃線にできても、駅を撤去することは喪失感の大きさから抵抗があったのだろうと推察できる。もう駅としての役割を果たす必要がなくなってもである。
 このように考えると、長良川鉄道は、この地域において極めて重要な役割を担っていることが分かる。

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