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マドリッド・リオ再訪 [都市デザイン]

 マドリッドに3年ぶりに訪れた。そして、マドリッド・リオを再訪した。前回は勝手に回ったが、今回はこのマドリッド・リオのマスター・ランドスケープ・アーキテクトであるフェルナンデス・ポラス氏に自転車で案内をしてもらった。ピオ駅での待ち合わせに現れたのは、この世界の中でも傑出した大プロジェクトをデザインした人とは思われないような柔和で謙虚な方であった。
 マドリッド・リオはマンザナレス川の両側を走っていた高速道路を6キロの距離に渡って地下化させてしまったプロジェクトである。2003年にルイス・ガジャルドン氏がマドリッドの市長になると、すぐに市税を上げた。そして、彼はマドリッドをグローバル・シティへと変容させるべく数々の都市計画プロジェクトを実践に移す。そのもっとも象徴的なプロジェクトがこのマンザナレス川沿いの高速道路M30の地下化であった。
 このプロジェクトは交通渋滞、沿道への騒音、排気ガスといった公害の被害を最小化することが目的であったが、それと同時に、高速道路が地下化されることでつくりあげられる上部空間を公園のプロムナードとして整備することで、それまでマドリッドにはなかったリバーフロントの親水空間を創造することになったのである。
 2004年には事業は計画され、2007年には高速道路の一部、地下化がされ、2009年にはプロサッカー・チームのアトゥレティコのスタジアムを除いて、道路は地下に潜り、上部空間にはもう本当に素場らしい公共空間が現出したのである。
 フェルナンデス・ポラス氏は、「自然と人とを共生させる」というコンセプトに徹底的に拘り、川沿いの松の木の多くは山から移植させ、自然の景観をここに再現させようとしたそうだ。マドリッド・リオには12000本の松の木が植わっている。舗装等は、近くの山で採れるグラナイトを中心に使った。また、このリバーフロントにある子供用の遊具などはポラス氏の事務所がすべて設計したそうだが、マドリッドの山の猪をイメージさせる猪の遊具や、岩場を複雑に交差する滑り台などをみると、ポラス氏達が子どもたちへ大きな愛情を有していることが感じられる。ポラス氏の事務所がほとんどのランドスケープのデザインをしたが、一番大きな橋だけは、コンペで次点になった設計事務所へ発注したそうである。彼自身は大きすぎてあまり好きではないそうだが、いろいろとスペインでもこういうことは配慮がされているようだ。
 設計をした一週間後にはもう工事が始まるという「クレージー」な状況を5年間続けて実現されたそうだが、市長を始めとしてデザイナー達が眠る暇も惜しんで労力を注ぎ込んだことで、このような大プロジェクトが実現されたことを知る。スペインの経済破綻が数年早く起きたら生じなかったプロジェクトかもしれないし、また、この事業が経済破綻の要因の一つであったかもしれないが、長期的にみるとマドリッドの将来を大きく変容させたメルクマール的なプロジェクトである。

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