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インフレは怖いということをブラジルで実感する [グローバルな問題]

 日本の経済政策はデフレ退治に一生懸命である。ただし、本当に一般市民が怖れるべきなのはインフレである。インフレは経済が成長するときに起きる。しかし、実質的な経済の成長を上回るインフレが起きた時、経済は崩壊の危機にさらされる。インフレは暴走するのだ。そして、まさにブラジルでそれが起きているのではないかと実感する。
 ブラジルは1997年頃から頻繁に訪れている。ほぼ毎年ぐらいのペースだ。1997年に訪れた時は物価の安さに喜んだ。この物価の安さは2006年ぐらいまでは続く。それが、特にここ数年で急激に増加している。
 インフレが起きる場合はどういう時か。通貨に比べてモノが少ない場合である。モノが少ない場合はどのような状況の時に生じるのか。それは、人口が増加するなどしてモノの需要が増えた時、というか需要と供給の関係性においてモノ不足が生じたときに起きる。一方で、勝手に通貨の供給を増やしても、通貨に対してモノが相対的に不足するのでインフレは起きる。しかし、その通貨で外貨を買ってしまえば、円の供給量は増えないのでインフレは起きない。とはいえ、円安にはなる。
 ブラジルではインフレが生じているので、レアル安が進んでいる。日本は輸出型経済なので円安のメリットを企業は受けることができるが、ブラジルはどうなのか。コーヒーなどは安くなると、国際競争力は強くなるが、ブラジルのコーヒーはほとんどアメリカ企業に牛耳られているので、別にブラジルの経済に恩恵をもたらすことはないであろう。また、ブラジルは資本主義とは言えないのほど公共事業体の規模が大きい。つまり、公務員が多いのだ。したがって、物価が上がっても、即、それが給料の上昇にはつながらない。小学校教員だけでなく、大学事務職員、大学教員、さらには警察官までストライキをする背景には、インフレに対応できていない給与体系への不満がある。
 このように考えると、インフレは怖い。というか、今、ブラジルで起きていることはスタグフレーションのような印象を受ける。ここらへんはあくまでも印象論ではある。ショッピング・センターには客が多くいるので、それなりに物価が高くても消費需要はあるのかなと思ったりもするが、知り合いのブラジル人は外食の回数は大幅に減ったという。
 日本は人口が縮小するという、そもそも国内マーケットが縮小している局面にある。これは、インフレが生じる人口増加とまさに逆のトレンドにある。そのような時に、政策的にインフレに向かうことは恐ろしく危険なのではないだろうか。しかも、インフレ対策として公共事業に手をつけているが、それらの資金は次世代から借りている。そうでなくても、我々国民に莫大な借金を背負わせておき、人口減少トレンドで、さらに借金を増やすことを疑問視しない人がいることが恐ろしい。世界的にも日本は特殊な状況にある。
 一般の人はデフレで損をすることはない。デフレで損をするのは、借金を持っている人や、輸出企業のオーナーぐらいだ。一般庶民はデフレで損をすることはほとんどない。経済が成長しないと大変だ、と指摘する人が多いが、株をもっていなければ経済が成長しなくても痛くもかゆくもない。本当に痛いのは、インフレで物価高になって、欲しいものが買えなくなるような事態が生じた時だ。そもそも、ユニクロやすき家、ドトール・コーヒーといったデフレ型リテイルがこれだけ跋扈していることが、デフレから脱却できない大きな理由だ。物欲はほとんど臨界点に達しており、もう値段を安くするしか需要を喚起できないほど市場は飽和している。これが経済が成長できない、すなわちインフレが進まない最大の理由であり、それは実はほぼユートピア的状況にあるのではないだろうか。日本は消費者天国なのだ。
 ブラジルは日本の消費環境に比べると、おそろしく未発達であり、まだまだ市場は未飽和である。経済が成長する余地は十二分にあるし、人口も増加している。日本と違って、ブラジルで消費者の立場にたつと、多くの不満を持つ。日本とは大違いだ。しかし、それでも現在の7〜8%のインフレは、実体経済を反映していない気がする。そして、それは、ブラジル国民の生活経済の破壊をもたらすのではないだろうか。デフレの日本では経済問題という言葉がまったくピンとこなかったが、ここブラジルでは怖いほど感じてしまう。インフレの国にいることの、将来がみえない恐怖は、アベノミクスにも近い将来においては通じるのではないかとも思ったりする。

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