SSブログ

学生が人の言うことを聞かなくなったのは、人から聞かなくてもスマホで情報を得られるからだろう [教育論]

 学生を引率してブラジルに来ている。そこで強く感じたのは、学生が人の話を聞かないことである。私の言うことはもちろんだが、ブラジルの人が学生のために時間をわざわざ取ってくれても、話を聞いてない。聞いているふりをするぐらいしっかりとした学生は稀で、大抵、講師が話をしていてもふらふらと移動してしまったりする。しかし、じゃあ、関心がないのかというとそうでもなく、質問などはしたりする。つまり、コミュニケーションの主体があくまでも自分でないと、しっかりとコミュニケーションができないようになっているようなのだ。
 そして、私が気づいたのは、圧倒的にスマホ依存であるということだ。どこの空港についても、まずスマホにアクセスできるかをチェックする。レストランに入っても、スマホがアクセスできるかをチェック。WiFi Free とでも書いてあるようなものなら、ポルトガル語もしゃべれないのに一生懸命、コミュニケーションをしようと努力して、ウエイターにパスワードを直接、打ってもらったりする。そして、ゲストがいても、平気で皆、レストランの料理がくるまで、ずっとスマホを観ている。皆、というか正確には6人中5人である。
 そもそも、自分が知りたいことはほとんどスマホを検索すれば教えてくれる。スマホが教えてくれないことには、興味を持たないので、どうでもいいことになる。そして私が観察している学生は、それでもブラジルに行ってみようというぐらいの知的好奇心と積極性は有しているのだ。残りの学生はもっと深刻な問題を抱えているということだ。これは、相当、大変な事態になっているなと思う。大袈裟ではなく、大学存亡の危機だと思う。
 私はゼミで大学の地元のゆるキャラを作成し、それをいかに普及させ、知名度を向上させるかということを学生に主体的に考えさせて活動させている。これは、受動的に勉強しても学ぶことが少ないので、能動的に勉強させた方がいいからだと考えたからだ。このようなことを抽象的に説明すると、学生は比較的肯定的に捉えるのだが、実際にゆるキャラが存在したりすると、ほとんどが敬遠する。私のゼミは、去年までは人気ゼミで倍率も2倍以上は常に確保できていたが、今年は大幅な定員割れである。
 主体的に考えるということ自体、学生はもう嫌なようである。というか、学生の発表を聞かないで寝ている先生とかのゼミが楽でいい、と本気で考えている学生も少なくない。まあ、スマホで何でも知りたい情報が入るし、そもそも大学で教えようとしている情報でスマホになくて学生の関心を持つようなものもないので、学生からしたら楽であればあるほどいいのだ。まさか、スマホが大学のライバルになるとは思わなかった。まあ、でもほとんどの大学の先生よりスマホの方が使い勝手がいいし、親切だからな。
 また、そうはいっても、スマホにない情報を自ら知ろうと頑張ったり、もっと主体的に勉強したいという学生もいたりするだろう、と思う人がいるかもしれないが、現状では、そのような積極的な学生のほとんどは、私が奉職する明学より上の大学に行ってしまっているのだ。もちろん、まだそのような学生が一部、明学にいるかもしれないが、その割合は大きく減ってしまっている。
 これは大変なことになってしまった。そして、このような学生を受け入れる企業や組織も大変なことになるだろう。まあ、このような事態は、別に日本人の学生だけでなく、他国でもみられると思う。実際、最近、私の講義を受ける留学生もコミュニケーション下手が以前より増えていると思う。スマホというかインターネット依存症が増えている。なんか、地殻変動ともいうべき、大変な状況が進行しており、大学という存在もその意義が大きく問われているような気がする。

nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0