SSブログ

『広告都市東京』 [書評]

気鋭の社会学者の12年以上前の作品に7年前の補遺を追加した文庫本。広告化されていき、消費社会のメディアとして80年代を風靡した渋谷に代表される都市空間が、既に死に体になっていることを、ハリウッド映画「トゥルーマン・ショー」の絶妙なる分析から説く。「唯一無比の渋谷性を背負った都市・渋谷は観光客向きの文化的幽霊としてならともかく、もう実在しない。どの郊外都市にもタワーレコードがあり、QFRONTがあり、公園通りがある。それは渋谷や池袋とまったく同じようにコスモポリタンだ」(p.155)。そして、筆者は広告都市が死に絶えた後、どのように我々は対処していくべきなのか。その処方箋のようなものを「はぐらかし」と照れつつも言及している。頁数は少ないが読み応えがある。補遺はクレヨンしんちゃんの「大人帝国の逆襲」の分析をもとに、コミュニティ論、シミュラークル論を展開しているのだが、これも十二分に読み応えがある。都市論、消費社会論に関心のある人は読んで決して損をしないであろう。
増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 北田 暁大
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0