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ライプチッヒ最大の団地グリュナウを視察する [都市デザイン]

ライプチッヒ最大の団地であり、ドイツでも3番目に大きな計画団地グリュナウを訪れる。2002年、2006年に次いで3回目だ。2010年にも実はライプチッヒには来ていたのだが、グリュナウには行かなかった。行っていれば4年ごとに定点観測のようなことができたのにと思うと残念だ。

さて、グリュナウに関しては結構、資料も収集していたりしたのだが、これまで体系的に整理したことは一度もなかった。資料が泣いている。ということで、しっかりと整理をしないと、と改めて今回のライプチッヒ訪問で感じたのだが、取りあえず私に同行してくれたグロシュマン教授のコメントをここに備忘録として記録させてもらいたい。

まず、グリュナウは8箇所の地区から構成される。ゾーン1がつくられたのは1976年。ゾーン8がつくられたのは1989年。ドイツ再統一の1年前というシニカルさだ。30000戸のうち、これまで6000戸が減築された。しかし、住民の反対からこれ以上の減築はなかなか難しいとのこと。そもそも、グリュナウは開発当初から住民は減築に反対してきた。ここを潰すのであれば、20世紀前半につくられた都心部のぼろい建物こそを取り壊せと主張したそうである。

グリュナウの住民は、社会主義時代にここに応募して当選した人達が多い。当時は、ここは最高の住宅地の一つであって、まさに宝くじに当たったように喜んだものである。その思いを今でも持っている人がいるそうだ。グロシュマン教授の住民調査でも、ここに住むことを勧めるという人がほとんど全員で、一人だけが「勧めない」と回答したそうだ。

さて、そのような調査結果があるが、それはここに住んでいる人を対象にしているからだとも言える。というのは、グリュナウは最盛期(1989年)の8万5千人の人口が4万4千人と半分近く減っているからだ。この減少率は極めて高い。現在こそ、減築の影響もあり空室率は20%と低くなっているが、それでも20%という数字は相当、高いともいえよう。ただし、この20%という数字も気をつけて解釈しなくてはならないようだ。まず、ゾーン1。すなわち、最も初期に開発された地区だが、ここの空室率は4%前後らしい。非常に低い。やはり、ゾーン7とゾーン8という新しく開発された地区の空室率が高いが、これは、立地的な問題というよりかはマネジメントの悪さという問題が大きいようだ。一部の住民はゾーン8は、湖に近く、また自然へのアクセスが最もよいので、一番理想的であると考えている人も多いようだ。

さらに、同じゾーンでも運営主体によって空室率は異なるようである。すなわち、自治体所有のものは最も空室率が高く、組合所有のものは低いようである。例えば、空室率が全般的に高いゾーン7地区においても、6階の建物を4階へと階数を減らし、お洒落な一階からのアプローチを設け、暖房も地域暖房からペレット式暖房へと変えたものは、空室がなく、ウェイティング・リストまであるそうだ。

ということで、一概にゾーンとかで空室率の高低を判断できない複雑さがあるようだ。また、グリュナウは下水道のシステムが、一筆書きのように鳴っていなく、ループ状に幾つかの建物ごとに分類されているので、他の団地のように端っこから取り壊す必要が必ずしもなかった。それが、減築をするうえでの順番をより自由に設定できたということがいえるであろう。

さて、それではどこから取り壊したか。ここらへんは昔から、しっかりと整理をしないといけないと思っていることで、また資料も持っているのだけれど、ドイツ語なので後回しにしてしまっていることである。ただ、またグロッシュマン教授の話によれば、高層のものから取りつぶしたとのこと。これは、取り壊した建物の跡地の管理は、建物の所有者がしなくてはならないという取り決めがあったので、なるべく多くの戸数を稼げて、なおかつ跡地の面積が少ないという高層ビルを取り壊したというのが大きな理由だそうだが、住民にどのように改善したらいいか、と尋ねると、とりあえず高い建物を低くしろ(取り壊すということではない)と回答するそうだ。

まあ、実際、人が住んでいるから難しいということがあるが、私が以前、調査して、とりまとめをしたアイゼンヒュッテンシュタットのように単純ではないことがグロッシュマン先生の話からも伺える。

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(一期開発地区)

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(五期開発地区)

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(七期開発地区)
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