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ライプチッヒの環境研究所の研究員達からドイツの縮小都市の動向をうかがう [サステイナブルな問題]

 今年の7月に横浜国立大学であった社会学会のワーキング・ショップで知り合ったドイツの研究者達と会いにライプチッヒに来た。私はほとんど知られていないが2002年頃からドイツの縮小政策の研究を細々と続けている。最初は気合いが入っており、大林の研究資金も獲得できたりしたので、アイゼンヒュッテンシュタット、コットブス、ザクセン・アンハルト州の縮小政策を論文でまとめたりしていた。その後、2009年にはドルトムント工科大学の客員教授でさらにその仕事をまとめようと考えたりしていたのだが、それから帰国して、なぜか失速している。忙しいからかもしれない。岩波ジュニア新書や中村ひとしさんの本をまとめたりしていたからかもしれない。まあ、そんなことだが相変わらず関心は持っている。
 さて、そんな私なので、ドイツの縮小政策研究者との話は面白いし、話も弾む。人口が縮小するうえでの大きな要因は、人口構成である。人口構成による問題であるという考えがある。これはドイツでもそうだが、日本ではより顕著である。この人口構成のいびつさを解消する方法は移民政策である。まあ、これを進めるべきであると個人的には強く思うし、日本の経済力であれば、今ならまだ間に合うが、迅速に対応しないと、経済力もすぼみ、日本に移民したいという人がいなくなる可能性も高い。そうすると、経済的には相当、じり貧になる。そういう覚悟があるならいいが、なければ移民政策を取るべきであろう。私は最近、日本のガラパゴス化が気になるので、そういう点からも移民政策には肯定的な意見を有している。
 さて、移民という点から面白い話を聞いた。現在、スペインは大不況のようだ。失業率が25%とかいうとんでもない数字らしい。そして、ドイツに出稼ぎに来ている。面白いのはベルリンとかライプチッヒに出稼ぎに来ているスペイン人が多くいるということだ。普通、ハンブルクとかミュンヘンとかデュッセルドルフとかに行くでしょう。なぜ、ベルリンやライプチッヒなのだろうか。会談している人がちょうど研究をしたそうなのだが、それによると、ライプチッヒに来る移民の70%が、ライプチッヒはいい都市であるからだと回答したそうだ。ベルリンなら分かるけど、ライプチッヒとはねえ。
 最近では出稼ぎの若者は都市を選ぶ。単に仕事をするだけでなく、いろいろと楽しみたいのだ。仕事+楽しみ。そういう考えからだと、ライプチッヒはいい都市というイメージがあるようだ。興味深い。そのうち、中国人研修生という名前の日本への出稼ぎも都市や場所を選ぶことになりそうだ。それって、さらに山間の村は不利になるということか。
 もう一つ、興味深かったのは、ドイツにおいても縮小が問題として認識されたのは、ようやく2000年頃からであったということだ。それまでは、失業が問題であった。縮小が経済的な問題であるとは、2000年頃までは、あまり問題にならなかった。雇用があれば、流出は減る。そういう認識であったのだ。
 縮小のポイントは、郊外化、雇用を求めての流出、低い合計特殊出生率であった。
 さらに、私はほとんど関心を持っていないアメリカの縮小都市に関してだが、2003年前だと縮小の話はほとんどタブーであった。レガシー・シティとか、シティ・イン・トラディションとか、シティス・レグローイング・スモーラー(Cities regrowing smaller)などといったほとんどギャグのような形容がなされていた。これは、縮小ということを考えたくもないからだ。
 東京の縮小に関しても、彼らは興味深いスタンスを持っている。東京ははるかに人口密度が高く、人口も巨大過ぎるので、人口縮小は福音であろうということだ。彼らは以前、イタリアの縮小都市を研究する際、最初、ナポリを事例として選んだのだが、ナポリは人口密度が高すぎるので縮小がプラスになることも多く、結果、ジェノバにしたそうだ。まあ、ドイツ的な観点から考えれば東京などの大都市の縮小はそれほど問題にはならないということだろう。確かに、問題なのは村落などである。村落の縮小研究は、この環境研究所ではあまりされていない。Shrinking Cityということで、都市の縮小が旧東ドイツでは大きな課題であるからだ。
 さて、ドイツの経済は本当に最近、好調なのだなということも確認できた。ライプチッヒはドイツの平均よりは悪いが、それでも失業率は2004年の時は20%(ドイツの平均は9%)、現在は10%以下(ドイツの平均は6%)。ライプチッヒはBMWの工場が再統一からそれほど時間が経たない中、進出をしたが、その後、ポルシェの工場も立地した。そして、何より、旧東ドイツの崩壊を結果的に導いたデモを実施した「自由都市」ライプチッヒというイメージは若者にはとてもポジティブだ。仕事がないにも関わらず、スペインなどから現在、多くの出稼ぎ若者を惹きつけているのは、このライプチッヒという都市の魅力なのではないかと思われる。
 そういう私も実は、ライプチッヒは相当、好きである。ベルリンも好きだが、こう何か可能性を感じさせるような自由な空気が流れている。そのような空気は例えば、私が一年ほど住んでいたデュッセルドルフには感じられない。ミュンヘンとかフランクフルトもそうである。なんか、ライプチッヒやベルリンには隙がある。この隙は、実は、若者にとって大きな魅力なのではないだろうか。
 一方で、他の都市に聞くと、コットブス、ツィッカオー、ゲラあたりは縮小していく一方であるという。私は、コットブスは人口減少に歯止めが生じているという記事を読んでいたのでちょっと意外だ。ゲラは大学がないのが致命的なようだ。ちなみにハレも2008年頃からライプチッヒのように人口が増加し始めているようだ。ふうむ、どうも縮小していた都市も一部はそのトレンドが変転してつつあるようだ。その理由を明らかにできれば、日本の縮小都市の参考にもなるであろう。

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