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ルワンダの首都キガリを訪れての個人的感想 [地球探訪記]

 ルワンダの首都キガリにいる。21世紀はアフリカの時代と呼ばれている。暗黒大陸とよばれていたアフリカは、今は成長大陸である。しかし、その実態は、日本人はあまり知らないのではないだろうか。私自身、アフリカは未知の大陸であったし、特に縁もなかった。
 アフリカと関係がなかった私だが、ある一つの出会いが、私をここアフリカに来させるきっかけとなる。私は2007年に、「アメリカ中小都市のまちづくり」という本を上梓する。これは、アメリカの中小都市で、素晴らしくまちづくりに成功した5つの事例を紹介した本なのだが、その一つ、ボルダーという都市を取材している時に、ある建築家と親しくなる。「コロラドの生きる伝説(リビング・レジェンド)」とも形容されるカール・ワージントンである。同氏は、ボルダーの中心道路であるパール・ストリートから自動車を排除して、衰退していた中心市街地を見事に再生したことや、デンバー郊外にテクノロジカル・センターを計画したことなどで知られている。
 1994年のジェノサイドの傷跡もまだ癒えていない2000年に大統領になり、また2003年にはジェノサイド後、初めての総選挙で当選したポール・カガメ大統領は、国をどのように再生したらいいかを模索する。そこで、デンバーのテクノロジー・センターを視察しに渡米し、ワージントンと面会するのである。カガメ大統領は、パール・ストリートやワージントンがその実践に力を尽くしたボルダーのグリーンベルトなどに大いなる感銘を受け、首都キガリの将来構想をワージントンに託すのであった。
 そして、ワージントンはキガリの都市の将来像をマスタープランとしてまとめるのである。私は、幸運にもマスタープランをつくり始めてから、それが完成するまでのプロセスをワージントンから段階的にリアルタイムで教えてもらうことができた。さて、そして同氏が作成したマスタープランは、マスターピース(傑作)と呼ぶにふさわしいものであった。トポグラフィーを意識して、ウェットランドやヒルサイドといったランドスケープを保全しつつ、21世紀の都市にふさわしい機能を備えた都市を、そのマスタープランは描いていた。近隣住区理論を彷彿させるようなノードによって、都市の階層を都市機能ごとに配置する分散型都市。それは、丘陵地という難しい条件を逆手に取り、世界でもユニークな個性を放つ100万都市の誕生でもあった。
 このマスタープランは、アメリカ都市計画学会のダニエル・バーナム賞(2009年)を始めとして、多くの大きな賞を受賞することになる。このマスタープランが描いた都市が、その後、どのように変遷しているのか。それを知るために、はるばるとルワンダにまで私は足を運んだのである。
 さて、初めて訪れたキガリは驚きの連続であった。これは、私がアフリカのことに無知であったことの裏返しでもあったのだが、まず、まったく暑くなく、避暑地のように涼しい。風が吹くと、快適そのものだ。熱中症で人が倒れるような暑さの東京から来たこともあってか、この冷房がいらない涼しさは有り難い。赤道直下でアフリカ、というとさぞかし暑いだろうと覚悟していたのだが、まさに拍子抜けをした。そして、街中が綺麗であり、また、街並みも新興住宅地はあたかも南仏か南カリフォルニアのようであったことに驚いた。さらに街中にはごみが落ちていない。ごみ一つ落ちていないと思わず書きたくなるぐらい、ごみがない。そしてごみが落ちていないことと関係があるのかもしれないが、東南アジアやインドなどの都市に行くと必ず直面する、鼻がひん曲がるような臭いが漂っていない。さらには、ほとんどの人が英語を話す。守衛とか、新聞売りとかの人が英語を話すのである。もちろん、話さない人もいるが、日本や諸外国に比べてもはるかにしっかりとした英語を話す人が多いので驚いた。これは、この国はつい最近まで、フランス語を公用語としていたからである。公用語を英語に変えてから、数年しか経っていないのに、この対応力は何なんだろうと思う。そして、人々の服装がお洒落であることだ。特に女性の洋服は美しい。色彩的な感覚が発達しているのであろう。アメリカはもちろん、日本よりもお洒落である。
 そして、肝心のマスタープラン。これは、当初、カール・ワージントンが描いたものから若干、変遷されていた。例えば、新しく計画されていた新しい都心センターは白紙に戻され、これは都心センターガから将来のノードの一つに格下げされていた。その理由を聞くと、新しい都心センターを創るのにはお金がかかり過ぎること、そして、都心センターをまだ強化する余地があるという判断からだそうだ。しかし、せっかくアメリカ都市計画学会の最高の賞ともいわれたダニエル・バーナム賞受賞のプランが実現されないのは、事情は分かるがちょっと残念である。
 キガリは、もう都市中が普請中という感じで、槌音が絶えない。土曜日、日曜日でも現場では土方の人達が働いている。ルワンダはアフリカの奇跡と称されるが、それが納得できるような経済的発展と、そして街や人の美しさである。 
 日本では、アフリカというとエボラ熱、武装ゲリラ、犯罪都市、マラリアといったイメージで捉えられているが、私が訪れたキガリは、そのようなイメージと180度違うものであった。清潔で、治安もよく、人々も真面目で誠実、そしてマラリアもなく快適な気候の、むしろ楽園というような形容詞がふさわしいような都市である。
 百聞は一見にしかず、という言葉を改めて、強く実感した。

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