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キガリのジェノサイド・メモリアルを訪れる [サステイナブルな問題]

 ルワンダのおぞましい歴史として、1994年に起きた国民同士が殺しあう大虐殺がある。これは、以前の宗主国であるベルギー人が、支配をしやすくするために、ルワンダ人をフツ族とツチ族に分けて、ツチ族にフツ族を支配させる構造をつくりあげたことによって生じた悲劇である。
 ツチ族とフツ族を分類する方法は、1)牛を10頭以上持っていること、2)鼻が高いこと、といういい加減なものであった。一般的には顔立ちが違うという捉え方がされているが、それまで共存してきた人達を、こんないい加減な分類方法で二つに区分できる訳がない。
 そこでベルギー人は、身分証明書をつくり、それにフツ族とツチ族と明記することによって、曖昧な区分を明確化した。このどうでもいいようなことが、後の悲惨な事件を引き起こすのである。
 国民を二分することで、お互いが対立し始める。運動会で適当に、紅組と白組とのどちらかに帰属させることで、対抗意識を煽るのと同様なことが、国家単位で起きたのである。しかし、運動会と違うのは殺し合いをしたことである。其れを扇動したのはラジオであった。そして、フツ族側には、ご丁寧に人殺しのための斧が配布されたのである。まさに漫画デビルマンの最後のエピソードで起きたようなことが、実際、現実として起きたのである。
 この大虐殺で多数のツチ族とフツ穏健派が殺害された。その数は50万人から100万人の間、ルワンダ全国民の1割から2割と推測されている。そして、それらの死体を食べた犬たちは、人を獲物と捉えるようになり、人をみると襲うようになったために、大虐殺の後、まず人々が実施したことは犬の大量虐殺であったそうだ。人は殺され、そして、インフラはずたずたに破壊された。
 この一度は無に帰したような国を再生させるために、ルワンダ政府が実施したことは、この忌まわしい過去を忘れずに、次代へと引き継ぐよう、記憶を風化させないような記念施設をつくることであった。これらの施設は200箇所以上、現在ではあるが、それらの中心的なものがキガリ・ジェノサイド・メモリアルであり、虐殺から10年後の2004年につくられた。
 このジェノサイド・メモリアルを訪れる。入場料は無料であるが、カメラで撮影するとお金を取られる。展示は大きく二つから構成される。一つは、ルワンダのジェノサイドに関する展示。ルワンダの虐殺のことがよく理解できる。もう一つは、ルワンダ以外のこれまでの人類史における虐殺に関する展示である。ルワンダ虐殺の被害者の顔写真が、強烈な印象を残す。人間は、こんな狂気の沙汰を集団で行えるのか、ということを改めて理解する。
 さて、展示は悲惨だし、後味は悪いが、このような歴史を人間は繰り返してきた。おそらく、似たようなことは、これからも起こるかもしれないが、その確率を少しでも減らすためにも、このような施設を訪れ、自らの愚かしさを再認識するということは極めて重要なのではないだろうか。
 人類の負の遺産であることは確かであるが、そのような過去の過ちを忘れず、しっかりと次代に伝え、二度とそのようなことを起こさないように努めることが現在、生きている我々の義務であろう。
 そして、それは福島の原発事故を起こしてしまった日本人、第二次世界大戦で中国、韓国、そしてインドネシアやフィリピンの人々に多大なる犠牲を強いた戦争を進めた日本人も、過去の過ちを繰り返さないためにも、そして、周囲の人々に理解してもらうためにも、極めて重要なことなのではないかと思うのである。

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(ジェノサイド・メモリアルの入り口)

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(ルワンダは死んだ、と書かれた展示の説明文)

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(被害者の写真)
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