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中村ひとし氏の講演会で改めて感銘を受けた話 [都市デザイン]

クリチバの中村ひとしさんが来日して講演をされている。22日は、私が奉職する明治学院大学で講演してもらった。そして、23日は横浜国立大学の主催で横浜都市創造センターにて講演会があった。この両日の講演会で、私が印象に残った彼の言葉を整理したい。

 ブラジリアは機能だけを考えて、人間を忘れた。その結果、ブラジリアでは人間が機能に従わなくてはならない。
 うどん屋のおっさんとか、花屋とか人がごちゃごちゃいてこそ街。都市は人が集まってできたもの。ブラジリアは教科書通りにやった。しかし、都市としては、今は機能していない。それで呼ばれて行ったのですが、ブラジリアは人口40万〜50万人の都市として計画された。しかし、それなのに大都市圏ではもう300万人を越えるような人口を抱えている。
 クリチバは人を大切にするという街としてきた。レルネル市長の考え方は、街は人を大切にする。自動車よりも人。人がどのように動くか、どのようにして働く、何を食べるのか。高速道路や大きなビル・・これは景観としては近代都市のイメージ。それが優れた都市としてイメージされている。
 クリチバは完成された都市像がない。ただ、幹線道路に開発を促進させるようにした。そうすると、都市が成長すると、この幹線道路が延びていくというようにした。それが都市計画の大事なところ。先に、都市をどのように持って行くのか。そのビジョンをしっかりとさせていた。それを踏まえたうえでの、これからの計画というのがある。
 クリチバはこれ以上、悪くしない。よくするのではなく、悪くしない、というアプローチでやってきた。100万人以上であると、都市は地下鉄であるというのが常識。しかし、クリチバは地下鉄を導入しなかった。お金もなく技術もなかったからだ。そして、代わりにバスを改善させた。ベストを求めていたら、ボゴタやソウルにまで影響を及ぼしたクリチバの優れたバス・システムは実現しなかったであろう。
 都市は人間と同じだ。都市の問題というのは、人間に例えれば病気のようなものである。そして、病気は放っておくと、どんどんと悪化する。1年間、がん細胞を放っておくとどうしょうもなくなるのと同様に、都市の問題も放っておくとさらに状況が悪化する。クリチバは、おかしくなったらすぐ解決。このアプローチを取ってきたことで、問題がそれほど悪くならなかった。
 JRの駅はどこを見ても同じ。そんなことが本来的にはある訳ない。そこに住んでいる人が街をつくるのに、なんで同じものが出来てしまうのか。日本人であること、自分達の故郷を放棄している。それが平気で行われているし、関心も持たない。自分達の街はしっかりと自分達でつくっていかなくてはならない。当たり前のこと。しかし、そういうことが平気で行われている。だから、変な街が、変な日本人が出きてしまう。
 ブラジルにはインディオが多くいる。州の環境局長をやっている時に、ちょうど学校が出来た。竣工式に呼ばれて行った。鉄筋コンクリートでタイル張り、蛍光灯の学校。行政はいいことをした気分だった。しかし、インディオは困った。インディオは蛍光灯を使わないし、椅子にも座らない。思いやりでやった積もりで、逆にインディオを怒らせる。インディオの文化が分からない、ことが明らかになったからだ。JRの駅も同じようなことなのではないか。
 本当は、そこに住む人を大切にする街でなくてはいけない筈。そこに住む人を大切にするための街づくり、それが、レルネル氏がクリチバ市で展開してきた街づくりなのである。

 ううむ、本当にいい話だ。中村ひとしさんの素晴らしい話をもっと知りたい人は拙著『ブラジルの環境都市をつくった日本人ー中村ひとし物語ー』を読んで下さい。印税ゼロ円という、私にとっては売れても何の利益もない本ですが、これは私のためでなく、この本を読む人のためになればと思って出版した本です。


ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語

ブラジルの環境都市を創った日本人: 中村ひとし物語

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 2014/03/10
  • メディア: 単行本



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