『失敗の本質』 [書評]
第二次世界大戦における旧日本軍の戦史研究。「6つの事例研究」、「失敗の本質」(分析)、「失敗の教訓」(課題の抽出)という3部構成になっている。戦史研究者と組織研究者からなる学際的な研究をまとめたものであるが、本書に通底している視座は「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶すること」である。一部で高い評価が為されている本書であるが、第二次世界大戦の事情等に通じていないものからすると事例研究は分かりにくい。小説と比べるのは不謹慎かもしれないが、司馬遼太郎の「坂の上の雲」などの戦争描写に比べると、はるかに理解しにくい報告になっていて、読み進めていくのが辛いぐらいである。しかし、一方で「失敗の本質」、「失敗の教訓」に関しては、まさに現代の日本組織、日本社会にも通じる問題点が浮かび上がってきて、参考になることが多い。事例研究がもう少し、分かりやすく整理されていたら、もっと読み応えの本になったであろうと思う。
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