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武田邦彦の『偽善エネルギー』は、とんだ偽善新書である [書評]

「偽善エコロジー」の二番煎じの本書。私は、著者は比較的まともな有識者であるというイメージを抱いていたが、本書を読んでそれが幻想であることが理解できた。「太陽光は放射能なので、放射能が存在した方がむしろ自然、放射能は健康に害がない」などの妄言は、呆れるが(オゾン層に守られていなければ、生物のほとんど存在できないことなどは明らかでしょう)、これも著者が無知というのではなく、読者にそう思わせるために書いているような印象を覚える。あと、エコロジー問題(なぜかタイトルはエネルギーなのだがごみ問題などのエコロジー的な内容が多い)に関しても、個人が頑張っても他が頑張らなければ意味がない、損をするだけだ、などというのは経済学でいう「共有地の悲劇」のことだ。共有地の悲劇をあたかも自分が発見したかのように、「だから個人が環境問題に取り組むことは無駄」と主張する著者の見識を疑う。また「大量消費=幸せ」という価値観の押しつけも大変、気になる。それ以外にもドイツのエネルギー源の割合などに関しては、2000年以前のものを使って、ドイツは全然、再生可能エネルギーで発電していない(現在は全体の23%ぐらい)などと主張するのも、おそらく著者は知っているけれど、読者をそのように誘導しようとして書いている印象を受ける。読むだけ無駄、のまさに偽善新書である。


偽善エネルギー (幻冬舎新書)

偽善エネルギー (幻冬舎新書)

  • 作者: 武田 邦彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/11
  • メディア: 新書



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