ホームレス中学生 [書評]
お笑い芸人である麒麟・田村の20歳ごろまでの自伝。ホームレス中学生という体験はなるほど、なかなか壮絶であり、読むものを引きつける。段ボールを食べたこと、うんこの神様を詐称し、小学生ギャングとの戦いに勝利したことなどは、フィクションでも面白い話だ。ただし、この本において、ホームレスの体験を著したのは、全体の3分の1にも満たない。この本の主題は、そのマーケティングの掴みとしてのホームレス中学生という話よりも、母を亡くし、また父も失踪した後、その悲しみや不条理を乗り越え、周りに支えながらふらつきながらも逞しく一人の少年が成長していくそのプロセスにある。そして、それはなかなか感動的なプロセスでもあり、心地よい読後感が得られる。