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買い物難民 [書評]

久しぶりに重い本を読んだ。いや、重いといっても200頁ぐらいしかない本なのであるが、その内容が重いのである。哲学者である杉田聡は『道路行政失敗の本質』を著しており、この本は、拙著『道路整備事業の大罪』を執筆するうえでの基盤となったような本であり、著者の慧眼には以前から敬服していたのであるが、本書はさらに隠れた日常、というか皆、ちょっと指摘されれば気づくようなことをテーマにしているので前著にも増して説得力がある。何に対しての説得力かというと、いかに日本の行政が出鱈目で本質的なニーズに対応していないのかということに関してである。この場合の行政というのは、地方行政というよりかは中央政府である。そして、本質的なニーズというのは、買い物に行ける、という生きていくうえでの必須のニーズである。このニーズが満たされない人々が日本において増えている、ということを筆者は数多くの筆者が収集したデータによって論証する。

本書は、このように日本のマスメディアが取り上げない「不都合な真実」を白日の下に晒した力作であり、現在の若者に是非とも読んでもらいたいと私は思う。本書の最後に作者は「「健全な精神」なるものがあるとしたら、それは困難な状況に生きる人の事情を理解できる精神であろう」と述べる。まさに、買物難民を強いられている高齢者の状況は放っておけば、大袈裟ではなく近未来の死を予告されたものであり、そのような事態を改変させていかなくては、いつかは高齢者になる我々にしっぺ返しのように戻ってくる。この多くの日本人が知らないふりをしている「不都合な真実」を理解しておくことは、将来の我々が豊かな老後を送るうえでも不可欠であり、高齢者のためではなく、若者には自身のためにも本書を読むことを勧めたい。なぜなら、若者もいつかは必ず老いて高齢者になるからである。


買物難民―もうひとつの高齢者問題

買物難民―もうひとつの高齢者問題

  • 作者: 杉田 聡
  • 出版社/メーカー: 大月書店
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本



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