SSブログ

伊勢神宮とまちづくり [都市デザイン]

伊勢神宮を訪れる。伊勢市で全国まちづくりカレッジが開催されたからである。そこで、いろいろと伊勢神宮関係の話を聞く。

日本には神社が8万ある。コンビニは4万4千店ぐらいであるから、神社の方がコンビニより多い。その神社の頂点に立つのが伊勢神宮であるが、伊勢神宮の正式名称は「神宮」である。これは、唯我独尊であるという自負かららしい。

昭和40年から外宮をお参りする人数が減って、230万人にまでなっている。パッと見て外宮と理解できるフォルムはない。まあ、フォルムがないところが伊勢神宮の素晴らしいところだと思うのだが、観光振興においては、何か視覚的なシンボルがないとやりづらいらしい。何だかなあ。そこで変なシンボルをつくったら、自己否定じゃないかと私は思ってしまう。

ちなみに、伊勢神宮は16世紀頃には完全に忘れ去られた存在であったそうだ。それが復活したのは、天皇家の祖先のアマテラスを奉じる内宮ではなく、外宮に祀られている穀物の女神トヨウケビメを売り出して、農民の信者を増やすというマーケティング戦略を展開したからである。これが「伊勢講」の始まりで、18世紀頭には年間で300万人以上、1830年には427万人を記録したそうである。そして、外宮の人気に便乗して、内宮も日本で最高位の神社と位置づけることで、むしろ天皇家が権威付けに利用したそうである(ここらへんの情報は、http://kousyoublog.jp/?eid=1361を参考にしている)。

ふうん。そうすると伊勢神宮のお参りする人数が減っているといっても、ターゲットは基本的に農民と天皇を崇拝する人々であるということだ。江戸時代には日本の大多数を占めていた農民は現在では激減しているし、さらに天皇を崇拝する人々は世界第2次大戦で、天皇が「人間宣言」してしまったから、がくっと減る。少なくとも、信仰の対象ではなくなってしまったから、そりゃあ伊勢神宮の人気も低落するでしょう。新たなる壮大なるマーケティング戦略が必要だが、江戸時代の農民のように一網打尽できる巨大市場や、戦前の天皇のような絶対的なカリスマがつくりにくい現代においては厳しいかもしれない。

しかし、それでも他の観光地に比べると、結構、ネタは豊富である。牡蛎や伊勢うどん、赤福といったご当地グルメもあるし、おかげ横町の街並み整備も相当の出来映えであると思う。ちょっと行けば志摩半島もあるし、外国人も来たくなる観光スポットであると思う。私的に、今すぐにでも改善してもらいたい点は、歩行動線がまったくなっていないこと。横断歩道もなく、道路を横断することはほとんど不可能。特に、伊勢市駅のそばにある踏切付近を歩いて渡るのは不可能だ。ついでにいうと、五十鈴川駅から内宮までのハイキング・コースも整備するべきであろう。あと、伊勢市駅の外宮と反対側の河崎は凄いポテンシャルを有しているのに観光化できていない。まず、最初に整備するのは、歩行ルートであり、出来れば自転車で周遊できる観光ルートも整備すべきである。これを整備せずに、マーケティングに依存しても、早晩行き詰まるであろう。

IMG_3369.jpg
(河崎の歴史的建築物をリノベーションしたカフェ)

IMG_3349.jpg
(しかし、このカフェに駅から歩いて行く歩行環境は劣悪そのもの)

IMG_3344.jpg
(この踏切のある道を安心して横断できるのは、踏切が下りている時だけ。そうでないと絶え間なく自動車が走っている。しかし、踏切は滅多に下りない)
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0