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『遠雷』 [映画批評]

立松和平の同名小説を1981年に映画化した作品。宇都宮の農村地域が、都市化によって変貌していく中、農業に人生を賭ける青年を描く。永島敏行演じる青年の父親は都市化によって地価が高騰したこともあり、先祖代々の農地を売ってお金は手にするが、家を出て水商売の女と暮らす。兄は家を出て、東京でサラリーマンをする。そして、自分の農地の周辺には団地が建ち、そこにやってきた新住民の主婦達は、青年の若い欲望を刺激し、翻弄する。不動産業者が残りの土地を売って欲しいと日々、嘆願していく。地方都市が郊外化することで、そこで暮らしていた百姓の暮らしがいかに大きな影響を受け、伝統的な農村的価値感が崩壊していくかが見事に表されている。見応えのある作品であると同時に、撮影時に20歳であった石田えりの若い魅力が画面に溢れている。また、1980年の宇都宮の都市化によって大きく変貌している風景も見ることができて興味深い。ただし、ちょっとポルノ映画的な映像が多いのと、また、映画音楽があまりにもお粗末であることは残念。あと、作者とはいえ立松和平が市役所の職員役でカメオ出演しているのだが、大根過ぎて、いくら実際、宇都宮市の公務員として働いていた経験があったとしても、これはない方がよかったと個人的には思ったりもした。台詞はなくてもよかったかもしれない。


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  • メディア: DVD



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